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AI画像検知による盛土の見守りサービス(第26回優勝社 株式会社アーバンエックステクノロジーズ)

株式会社アーバンエックステクノロジーズとの連携

2021年7月、豪雨によって不適正な盛土が崩落したことによって甚大な被害が発生したことを受け、危険な盛土等を包括的に規制し盛土等に伴う災害を防止する「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)」が令和5年5月に施行されました。
この法律を受け、東京都においても、広範囲にわたる規制区域に対して不法な盛土等の認識・通報体制の構築が必要となります。

株式会社アーバンエックステクノロジーズとの連携では、同社が提供するスマートフォンやドライブレコーダーを用いた道路の総合管理ツール「RoadManager(ロードマネージャー)」等を活用し、盛土における異状の自動検知機能や、都民による盛土情報の投稿機能、投稿された盛土情報の管理機能等の開発を行っています。

車載カメラ画像から盛土の異状を自動検知、都民の投稿と併せて盛土情報を一元管理

アーバンエックステクノロジーズ社との協働では、盛土自動検知サービス、盛土情報投稿アプリ、盛土ダッシュボードの構築に取り組んでおり、現在、各機能の性能検証や試行運用結果の取りまとめ、本番運用に向けた課題整理等が進められています。

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株式会社アーバンエックステクノロジーズとの協働について東京都都市整備局の担当者へインタビュー

「都民の力を活用した盛土の見守り(安全性確保)サービスの開発・普及・利用促進」をテーマとしたUPGRADE with TOKYO第26回。テーマ設定の背景や優勝社が選ばれたポイントについて、東京都都市整備局の担当者にも話を聞きました。

第26回のテーマを「都民の力を活用した盛土の見守り(安全性確保)サービスの開発・普及・利用促進​」とした理由は何か。

2021年7月、静岡県熱海市伊豆山地区で大雨に伴い不適正な盛土が崩落し、大規模な土石流災害が発生したことから、不適正な盛土が社会問題になりました。抜本的な法改正が行われ、規制区域が広範となることから、東京都としてもどのように監視していくのか、が課題となっていました。
行政職員だけではマンパワーが足りないので、都民による積極的な情報提供が不可欠であり、都民が不法な盛土等を発見した際に、容易に認識・通報できる環境を整備したいと考えました。
また、既存の盛土についても安全確保を目的として定期的な経過観察が必要となることから、効率的に情報収集する手段はないかということで、スタートアップからの提案を募集しました。

ピッチ開催にあたり、スタートアップにはどのような製品・サービスに関する提案を期待していたか。

継続的な都民の参加が重要であるため、広い普及、継続的な利用を促す仕組み、アイデア等も含めた提案を期待しました。

例えば、想定していたサービスの例としては以下のようなものがあります。
・ドライブレコーダーを活用した画像診断による情報報告ツール
・盛土情報の報告を促す位置情報ゲーム、位置情報を活用した盛土造成地陣取りゲーム
・AR等の技術を活用した盛土の適法性判定ツール
・SNSやインフルエンサーマーケティングを活用した普及・利用促進サービス、SNSと連携したスタンプラリー
・盛土に関する子供向けの教育+実地調査ゲーム
・アンバサダーを活用した定期的な盛土の見守りコンペティション

ピッチに出場した5社の中で、アーバンエックステクノロジーズ社が優勝した理由は何か。

同社を選んだ理由としては主に3つあります。
・行政実務をよく理解し、提案内容がテーマに合致していたこと
・都民参加まで施策として落とし込めており、実現可能性が高いこと
・すでに建設局で導入されているサービスを利用するなど、過去からの積み上げがあり即効性が高いこと

協働プロジェクトを推進するうえで、障壁となった事象や課題等はあったか。

本事業で構築する盛土自動検知サービス、盛土情報投稿アプリ、盛土ダッシュボードのうち、盛土情報投稿アプリと盛土ダッシュボードについては馴染みがありましたが、盛土自動検知サービスはどのように進めていくか想像し難く、協定書を作成するにあたり不安がありました。
まずは通常の発注と同様、アーバンエックステクノロジーズ社との協議内容や一般的なシステム構築仕様書を参考に、協定書のベースを作成しました。その後、産業労働局・補助事業者がサポートしてくれる仕組みとなっていました。いただいたアドバイスを踏まえ、検知対象の整理・選定⇒AI学習データ準備⇒複数の教師画像をAIに記憶⇒性能試験⇒報告書作成など、作業ステップを細かく分解し、協定書に盛り込むことで、イメージを具体化することができました。

これまでの取組を踏まえ、今後はどのような取り組みを予定しているか。

盛土自動検知サービスについては、公用車等にカメラを設置し、AIを用いた画像解析により異状箇所を自動検知する取り組みを検討しており、2024年度の試験運用開始を予定しています。
また、都民が不適正な盛土や既存の盛土の不具合などの写真・位置情報を投稿する盛土情報投稿アプリについても、2024年度より運用開始する予定です。

不適正な盛土行為や既存の盛土に関するリスクについて、AI自動検知や投稿アプリの仕組みを整え、都民の力も活用した見守り体制を構築していきます。

本協働プロジェクトを通じて、スタートアップとの協働を行うメリットとして挙げられることは何か。

AIなどの最新技術の活用など、行政職員では思いつかない都民の注目を集めるためのアイデアを得られることです。また、価格や会社規模ではなく、課題と解決策のマッチング部分に注目して、SU企業の良い技術・アイデアを取り入れられる点もメリットだと考えています。

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