山口周さんの「外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント」を読んでみた
■作者が一番言いたいこと
スキルは
1.その会社で評価されるスキル
2.その業界で評価されるスキル
3.どの業界でも評価されるスキル
に大別される。
本当に自分を助けてくれるのは
「3.どの業界でも評価されるスキル」だ。
プロジェクトマネジメントのスキルはもっとも業界横断的に活用が可能で、
「持つもの」と「持たざる者」の間に大きな差を生むスキルである。
■勉強になった要点要点
プロジェクトマネジメントが業界横断的に有用なポジティブスキルということは疑いようの無いところであろう。どこ会社にも必ず「プロジェクト」はあるのだから。
本書の内容を、敢えてPMBOKに当てはめてみてみると、
・「スコープマネジメント」:勝てるプロジェクトを見極めろ、
・「品質マネジメント」:目的と意義に立ち返ることで品質を確保する
・「資源マネジメント」:とにかく人は多めに確保しろ
・「コミュニケーションマネジメント」:いつも上機嫌で。情報を流通させよう
・「リスクマネジメント」:期待値は低く持って行く。
・「ステークホルダーマネジメント」:不安にさせないことに注力する
・「調達マネジメント」:あまり記載は無かったように見える
といった感じだろうか。
上記の中でもとにかく「コミュニケーションマネジメント」と「ステークホルダーマネジメント」について色々なテクニックや注意しなければいけないことが紹介されていた。
その中でも私が特に重要だと思ったのが、
・プロジェクトはメンバーで決まる
・ステークホルダー管理はきっちりと
・リーダーシップはやっぱり大切
という3点だ。この3点について刺さった個所を抜粋してみる。
∇プロジェクトはメンバーで決まるとは
まずは人員の量。プロジェクトに必要な量に対して100%では必ず破綻する。危機に対応できないから。遊びが発生するくらいの人員が望ましい。成功しても失敗してもプロマネの評価になるのできちんと交渉しよう。
メンバーの持つ懸念や期待を把握した上で、プロジェクトの意義を伝えモチベーションをあげ、自発的に動けるようにする。メンバー間の情報流通はプロマネがハブになってはいけない。それでは情報の流通量がハブのキャパに左右されてしまう。
もし、「優秀なメンバー」と「相対的に優秀でないメンバー」、「難しいタスク」と「簡単なタスク」があった時に、やってしまいがちなミスは「難しい仕事」に「優秀なメンバー」、簡単な仕事に「相対的に優秀ではないメンバー」をアサインすることだ。両方とも失敗する確率が高まる。正解は、「簡単なタスク」に「優秀なメンバー」をアサインし、「難しいタスク」を、「プロマネ腕まくりして優秀でないメンバーと一緒にこなす」こと。そうすれば簡単なタスクのことは忘れて作業出来る。
∇ステークホルダー管理はきっちりと とは
プロジェクトオーナーの期待を明確にする。そのうえで勝てるプロジェクトと勝てないプロジェクトを見極める。少なくとも「何のために」が抜けているプロジェクトはヤバい。
プロジェクトオーナーが複数いてそれぞれの期待が異なる場合は、プロジェクトオーナー同士できちんと目的を決めて貰うことが大切。
プロジェクトを実際に動かす前に関係者の裏マップを作ると良い。プロジェクトをつつがなく終わらせるには政治が不可欠。
そのためにもプロジェクトオーナーの不安には敏感でいよう。そしてその不安に対し「大丈夫」というメッセージは適切に出していこう。
それでいてきちんと「期待値」はコントロールすべし。「低い期待値」に落ち着けることもプロジェクトの難易度に関する見通しを共有することに役立つ。要は「成功」させるための布石として成功のラインを下げておくのも有効だということだ。
目指すところは、「マイクロマネジ」されない環境。プロジェクトオーナーにマイクロマネジされるプロジェクトは最悪だ。プロマネもモチベーションを保つのが難しくなるだろう。
∇リーダーシップはやっぱり大切
嫌われることを恐れない。それでいていつも上機嫌でいること。上機嫌なリーダーが率いるチームではメンバー相互間、もしくはリーダーとの情報量が増加する。 それは「何かおかしい」という感覚の早めの共有にも役立つ。
リーダーシップは一日にしてならず。いきなり良いリーダーになるのは難しいので、振る舞いから入ろう。そしてトラブルはすべてリーダーである自分の責任という意識を持つ。「The buck stops here = すべての責任はここで止まる」というハリー・トルーマンの覚悟を見習おう。
それは「助けて下さい」と言える勇気を持つことにもつながる。自分の力量だけで火消ししようとすると炎上させてしまうだけだ。
山口さんが本書でも述べていたがプロジェクトの半分は人選で決まるという。とにかく「人」だ。
プロジェクトメンバーに対しての接し方、そしてステークホルダーに対しての接し方。意識して変えて行こうと思わされる一冊だった。