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パイオニア「グルール機体」

マジック:ザ・ギャザリングのパイオニア環境に存在する、赤緑のビートダウンデッキ「グルール機体」。
友好色ダメージランドが再録されリーガルになって以降メタの一角に現れ、トップメタのラクドスミッドレンジに有利なデッキとして一時はかなり隆盛し、現在は環境が推移した結果トップメタからは引いて「地力はあるが立ち位置は微妙」という感じになっているデッキだ。
詳しくない人のために一応説明しておくと、グルール機体というデッキは「機体デッキ」ではなく、「赤緑ビートダウンの一番強いクリーチャーがたまたま機体だったデッキ」であり、
カラデシュ期のスタンにあったマルドゥ機体などとは根本的に違って単純なステロイド(マナクリーチャーを使用した赤緑ビートダウン)である。
なお、その一番強いクリーチャーというのが《エシカの戦車》で、本来はアーティファクト-機体なのだが、猫トークン2体がセットでついてくるので別途乗り手を用意する必要が無く、事実上4マナ4/4+αとして機能する。そしてその+αがとても強いのだが、詳しくは割愛する。各自調べてみてほしい。
筆者が使用しているリストだが、2024年4月の段階では、以下の形で落ち着いていた。
(サンダー・ジャンクションの無法者発売前)

メインボード(60)
土地(24)
4《踏み鳴らされる地》
4《銅線の地溝》
4《カープルーザンの森》
2《岩山被りの小道》
1《バグベアの居住地》
2《ハイドラの巣》
3《変わり谷》
1《耐え抜くもの、母聖樹》
1《反逆のるつぼ、霜剣山》
1《山》
1《森》
クリーチャー(24)
4《ラノワールのエルフ》
4《エルフの神秘家》
2《太陽の執事長、インティ》
4《無謀な嵐探し》
4《恋煩いの野獣》
4《砕骨の巨人》
2《月の帳の執政》
呪文(10)
4《密輸人の回転翼機》
4《エシカの戦車》
2《アクロス戦争》
2《抹消する稲妻》
サイドボード(15)
1《湧き出る源、ジェガンサ》※相棒
1《アトラクサの討死》
2《アクロス戦争》
3《暴れ回るフェロキドン》
2《丸焼き》
3《未認可霊柩車》
3《減衰球》

少し珍しいカードも入っているが、捻りの無い愚直なリストにしている。
グルール機体(というかステロイド)には「不要になったマナクリーチャーをどう活用するか」といった課題が存在する。
《ラノワールのエルフ》に代表されるマナクリは最序盤に出せれば最強クラスのマナ加速となる。1ターン目に出せれば2ターン目に《無謀な嵐探し》を出すこのデッキ最強の動きが可能になるし、2ターン目に出すマナクリも3ターン目《エシカの戦車》等に繋げられるのでなんとか許容範囲内だ。
しかし、3ターン目以降のマナクリはただの1/1に等しいくらい価値が下がる。いや確かに土地の代わりにマナ供給してくれるのは良いのだが、3ターン目(土地3枚)ならそこまでありがたみは無いし、そもそも3ターン目に土地が止まって2枚のような状況なら大体負けである。
「1ターン目最強」なので最大の8枚入れたいが、「3ターン目以降は最弱」なので上手く活用なり処理するなりしたい。そこでグルールが取れる主なアプローチは3つだった。

1つ目は《鏡割りの寓話》。言わずと知れたMTGのゲームシステムと相性が良いカードで、マナクリからの2ターン目が着地でき、手札にある不要となったマナクリを捨てて有効牌を探しに行く能力もある。しかし《寓話》は3章が動き始めるまでが遅く、どちらかというと中~長期戦に力を発揮するカードであり、その点では速く動きたいグルールにはかみ合わない部分があった。

2つ目のアプローチは《狩人の贖罪》で、上記の《寓話》と同じくマナクリから2ターン目着地が可能だ。不要になったマナクリを生贄にして2章能力を使えることも相性が良い。《アクロス戦争》で奪ったクリーチャーを生贄にする小技もある。しかしクリーチャー除去に弱いという欠点を抱えており、2章も3章も戦場にクリーチャーがいる前提の能力なため安定しない。

3つ目のアプローチは「マナクリを減らす」こと。減速を受け入れて安定性を取ることになるが、その場合でも6枚はマナクリを入れることになるだろうから課題から完全に逃れることはできない。マナクリ0枚という構成もできるだろうが、それは緑を使うメリットを半分放棄しているに等しい。

そして昨年末、非常に強力な4つ目のアプローチが登場…いや解禁された。それが《密輸人の回転翼機》、通称《コプター》である。
もはやあらゆるアグロデッキで使える《コプター》だが、ことグルールとの噛み合い方は尋常ではない。マナクリで搭乗でき、ルーティング能力で不要なマナクリを捨てて有効牌を引きに行ける。貴重な空戦力であり、かつスカスカだった2マナ域でもある。
そもそもグルールはマナクリ⇒2ターン目3マナを重視して2マナ域が《踏み付け》のみというリストも多かったので、とてもありがたい。

〇グルール機体にしては少し珍しいが使って強かったカード
《太陽の執事長、インティ》:上記《コプター》と相性が良く、両者の動きが噛み合うと非常に気持ちが良い。また余った土地やマナクリ、コントロール相手に腐った《アクロス戦争》や2枚目の《インティ》等を変換できる動きも強い。衝動的ドローしたカードが使えない状況でも、手札1枚が0マナで+1/+1カウンター(&そのターン限りのトランプル)になると考えると悪くない。

《月の帳の執政》:好きで使いたいから入れているのもあるが、「ジェガンサ相棒条件を邪魔せず」「飛行の大型で」「重すぎず」「アドを取れて」「タダでは死なない」と考えたら中々のやり手。《インティ》ともシナジーがある。先に出来事として唱えてから再度本体を唱えられる出来事呪文とも良相性。「呪文を唱えて0枚の手札を捨ててドロー」ができ、呪文をバンバン唱えてトップのカードを引き込み、土地が来ると止まる…やっていることは《実験の狂乱》に近い。

《アトラクサの討死》:さすがにメイン・サイド合わせて置物に触れるカードが《母聖樹》1枚だけというのは不味いので、枠がカツカツなサイドに1枚だけ入れている。飛行生物(あとバトルも)を破壊できるのでイゼットフェニックスの《帳簿裂き》等を倒せるのが偉く、デッキの性質上ソーサリーなことはそこまで欠点にならない。《毒を選べ》と比べると1マナ重いが、こちらが選んで壊せるのは大事。パイオニアには「力線ドラコ」は存在しないが、《血管切り裂き魔》が存在するのでお好みで選択となる。

〇使って弱かったカード
《狩人の贖罪》:なんで定番カードになっていたのかがわからない。除去に弱すぎて安定しない。《寓話》の方がはるかに良い。最近抜けているリストも多いし。

《ヴォルダーレンの興奮探し》:概ね3マナ3/3の《モグファナ》。たまに《恋煩いの野獣》あたりを投げて強いときがあった。それだけ。

〇使って強かったけど抜けた・減らしたカード
《巨大焦がし大口》:対アマリア探検(あと天使)用カード。《暴れ回るフェロキドン》と似たカードで、あちらは威迫とダメージ誘発、こちらはトランプルとパワー4がメリット。《フェロキドン》は《エシカの戦車》とディスシナジーなのだが《大口》は単体で搭乗できるので、メインから採用するならこちら。サイドからならばアンチカードとしての性質が強い《フェロキドン》がベターだろう。

《漁る軟泥》:メインから入れても仕事する墓地対策カード。ライフゲイン&サイズアップができて対アグロや消耗戦にも強い。しかし今のメタではメインから入れて強い状況があまり多くなく、サイドから入れるならより強烈な墓地対策カードの方が良いと感じた。

《火口の爪》:本体に撃てること、パワー4以上を確保しやすく威力も十分に発揮しやすいことから好感触。とはいえ取り回しの観点から今は《抹消する稲妻》を除去に採用している。

《温厚な襞背》:3つの仕事をこなせるユーティリティカード。しかし能力を使おうとすると重いため、もっと軽いカードでなければ墓地対策や置物破壊としては効果が薄いと感じた。少なくともパルヘリオンシュートやエニグマファイアーズへの対策としては遅すぎる。

《地震土竜、アンズラグ》:4マナ8/4のトンデモパワー生物。疑似回避能力を持つが大体は相打ちになるので本人が連続攻撃することはあまりない。マナ加速かつ《無謀な嵐探し》から展開し速攻で殴れたら爽快だが、それができなかった時は虚無感が大きい。それでも《エシカの戦車》に次いで戦場に与えるインパクトは強いカードなので少数採用はアリだと思う。

《領事の旗艦、スカイソブリン》:初期のグルール機体では複数枚取られていたが、ここ最近は入っても1枚程度となっていることが多い。単純に重く、それでいて搭乗コスト3なのも辛い。《無謀な嵐探し》とは噛み合うようで噛み合わない。とはいえ動きさえすれば恐ろしく強いことは確か。

《栄光をもたらすもの》:赤の5マナ圏なら最強各のクリーチャーだろう。上記《スカイソブリン》と役割は近く、こちらは単体で仕事ができることもあり個人的にはこちらの方が好き。とはいえ5マナが重く、《ジェガンサ》も使えなくなることから外している。

〇キープorマリガン基準
基本的には「1ターン目マナクリーチャー、2ターン目3マナ行動」ができればキープとなる。「土地5、マナクリ1、3マナ生物1」というハンドでもキープしたい。3ターン目以降に呪文を引けなくても相棒の《ジェガンサ》がなんとかしてくれる。
問題はマナクリーチャーが無かった時で、ここで初動が《恋煩いの野獣(切なる思い)》or《インティ》or《密輸人の回転翼機》の3パターンのうちいずれかならキープしてもよい。もちろん他に何が引けているかにもよるのであくまで目安。特に《コプター》の場合は3ターン目には何かしらクリーチャーを出せないとダメだし、当然《恋煩いの野獣》+土地6なんかはどう考えてもマリガンだ。
いずれにせよ、3ターン目までに攻撃できない初手はなるべく避けたい。ちなみにベストムーヴは、1ターン目マナクリーチャー⇒2ターン目《無謀な嵐追い》⇒3ターン目《エシカの戦車》となる。これができたら大体勝ち。なお妨害等が無ければ、この展開が最速キルターン(4ターン目に追加でクリーチャーを出して速攻フルパンで勝ち)となる。

〇プレイングのあれこれ
「《踏み付け》を温存するな、《巨人》を出せ」
《踏み付け》はこのデッキには貴重な除去なのでつい温存したくなるが、ターン中他に出すクリーチャーがいないのなら《砕骨の巨人》として出してしまったほうが良い。
このデッキはビートダウンデッキなので除去よりもクリーチャーの方が重要であり、《砕骨の巨人》はスタッツも能力も3マナ域としては十分優秀なので出し惜しみすることはない。
もちろん、除去必須のクリーチャーがいたり、相手がアマリア探検や発見コンボだったりでインスタント除去を構えないといけない場合もある。
似たようなことは《恋煩いの野獣》にも言えて、3マナしかないなら《切なる想い》よりも《野獣》本体を出すべき。もちろん1/1がいないor出せないなら《切なる想い》を優先したい。

「《インティ》の使い方に気をつけろ」
比較的新しいカードかつ挙動が独特なので、慣れるまでが難しい《インティ》だが、上手く扱えるとかなり便利なので是非使ってみて慣れてほしい。
まず、捨てるカードとしては余った土地とマナクリーチャーが第一候補。コントロール相手の腐った《アクロス戦争》などもそう。土地が止まっているなら4マナのカードも候補。
そして能力を使うタイミングだが、「余ったor腐っているカードが手札にあるならいつでも」「第二メインで3マナ使えるとき」を目安にすると良い。
あと、能力を使うつもりなら第一メインで土地セットはしないように。《インティ》で追放した土地を第二メインでセットできることがあるため。
ちなみに《コプター》の攻撃時ルーティングと《インティ》の攻撃時ディスカード選択は同じタイミングで誘発するため、《インティ》の能力を先にスタックに積むと《コプター》の能力を先に解決できて、捨てるカードの選択肢が広がる。

〇今後の展望
2024年5月現在、サンダー・ジャンクションの無法者が発売されてからは《精鋭射手団の目立ちたがり》を採用した赤単系デッキなどが大きく勢力を伸ばしており、またメタが変わりつつある。
自分のグルール機体は《果敢な追跡者、ルビー》などを追加して試運転しているが、家庭事情もあってあまりイベントに出ることができていない。
プレイヤーズコンベンション愛知2024あたりでまた何か書くかもしれない。

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