テラスハウス TOKYO 2019-2020 38th WEEK

テラスハウスは面白い。「成立していない会話」が見られるから。
価値観が違う人同士が意見をぶつけあったら、こんなにもすれ違いが起きるのかと感心してしまう。とにかく「互いの言いたいことが噛み合っていない」会話が結構な頻度で出てくる。エピソード38で、象徴的なシーンがあった。

「京都旅行で、快が当たり前のように新幹線代やホテル代を奢ってもらっていたのを見て花が冷めてしまった」ということについてのビビと快の会話。

ビビ「プライドないのかなとかみんな言っちゃうわけよ」
快「なんのプライド?」
ビビ「全部、社長から出してもらって…」
快「プライドなんかないよ。そんなプライドを立ててる時点で、俺はなんでそんなに自分に強がるのかなって思うけどな」

見事に会話が成立していない。快はビビが言いたいことを正確に理解できていないから、頓珍漢なことを言っている。

ビビが言いたいのは「他人に奢ってもらってばっかりで、あなたの自尊心は傷つかないの?お金がないなら、せめてお金がないなりの行動(率先して家事をするとか)をしないとあなたは格好悪く見えてしまいますよ」ということ。
しかしながら、快は「プライド」という言葉に過剰に反応して「プライドなんかないよ」と強目の語気で返している。この「プライドなんかないよ」を文脈通りに解釈すると、「別に俺は他人に奢ってもらうことになんとも思わないし、我慢してまで自分の行動を制限したくない(≒お金を出す代わりに家事なんてしたくない)」という意味になってしまう。

つまり、快はビビが言う「プライド」の意味を正しく理解できていない。頭の中で「プライド」を辞書的な意味に変換して、ただただ自分の価値観をぶつけている。悲しいことに、これは「快にプライドがない(≒他人に奢ってもらうことを何とも思っていない)」ことの逆説的な証明になってしまっている。
本来なら快は、「俺にだってプライドはあるけど、お金がないから奢ってもらうのは仕方がない。だからせめて率先して家事をやるようにしてるんだ」とか言わないと反論になっていない。

でも、会話はディベートではないので結局のところ論理より感情が強い。反論になっていなくても、あれだけ自信満々に言えばなんとなく正しいように聞こえる。「成立していない会話」の一番面白いポイントはそこかもしれない。
「正しいことを言っている人」より「正しそうなことを言っている人」が優位だ。その様子がリアルに見られるテラスハウスは本当に面白い。

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