M-1漫才論争のこと

M-1グランプリ2020の優勝ネタに対して、「あれは漫才か、漫才じゃないか」論争が巻き起こっています。僕の周りでは、普段あんまりお笑いを見ない人が「あれは漫才じゃない」と主張して、お笑い好きな人たちが「漫才だ!」と怒りながら反論している様子がよく見られます。

ちなみに、僕は漫才だと思っている(正確には、「漫才じゃない」とは思わない)けど、ここではそんなことが言いたいわけではありません。各所で起こっている漫才論争を見て、「お笑い好きの人たち、そんなに怒るなよ」と思っています。

「あれは漫才じゃない」と主張している人たちは、おそらく年が明けたらM-1グランプリ2020のことなんて忘れ去って、R-1グランプリ2021とキングオブコント2021を見ることもなく、1年後のM-1グランプリ2021の結果にまた文句を言いに来るだけです。

もっと言うと、「あれは漫才じゃない」と本気で主張している人はいるのか?と思っています。M-1はお化けコンテンツなので、普段お笑いを見てる人も見てない人も、自分の感想を言わなければいけない場面に出くわします。

普段お笑いを見ない人たちも、「昨日のM-1見た?どうだった?」と聞かれたら、何か気の利いた感想を言わなきゃと思うんでしょう。そうすると、「まあ面白かったけど、優勝した人たちのネタは漫才じゃないよね」と、なんとなくネットでよく言われていることを自分の主張のように言ってしまっていることがほとんどじゃないでしょうか。

僕も同じような経験があります。映画館で「君の名は。」を見た後の自分の率直な感想は「なんか後半よくわかんなかったな」だったけど、人に感想を聞かれたときは「まあ、あれだけ売れ線の要素詰め込んだらヒットするよねって感じだわ」とキモい感想を言ってしまいました。

会社でアメリカ大統領選挙の話題になったときも、自分の意見なんて何もないのにいざ話題を振られると、「うーん、トランプが勝ったら”対岸の火事”ってわけにはいかないでしょうね」と何も言ってないのと同じ意見を言ったこともあります。

とにかく、「あれは漫才じゃない」と言っている人たちは「あれは漫才じゃない」という以外にカッコつく感想が見つからないから口に出してしまっているだけです。「あれは漫才だ」派の人たちがムキになって怒る必要はありません。ちなみに去年のM-1は、「今年は人を傷つけない笑いが多くてよかったよね」が「カッコつく感想」でした。

普段からアンテナを高く張って関心を持っている人ほど、その分野について偏った意見を言おうとしません。逆に、偏った意見が蔓延るということは、それだけその分野が大衆に浸透しているということです。お笑いが好きな人たちは、「漫才についてよくわかってないけど意見が言える人たちが増えたこと」を喜びましょう。


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