禍話リライト「怪談手帳より 風女」
「確か最初は普通のおばさんだったはずなんです。」
とAさんは語る。
『アマギ』という、表札のかかった町外れにある大きな館の主人であったらしい。
コートを着て、ショールを巻いて、町を歩き回るその女性は旦那さんに先立たれて未亡人になってから少しおかしくなってしまったのだと噂されており、誰からともなく『風おばさん』と呼ばれていた。
ふらふらと当所もなく徘徊しているからだとか、そんな程度の由来だった。
一昔前にはどこの町にもそんな話はあったようであり、どこか困った人や、本来増えに