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余寒の怪談手帖 リライト集

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怪談手帖が大好きすぎて〈未満〉も含め、色々な方のリライトをまとめてしまいました。 原作者・余寒様の制作された書籍、「禍話叢書・壱 余寒の怪談帖」「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」…
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2021年8月の記事一覧

禍話リライト「アゼバシリ」(怪談手帖)

バラエティー番組によくある、動物動画へのアテレコが嫌いになるような話である。 そういった類の番組が好きな方は、読むのを避けた方が良いかもしれない。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「動物番組とか、動物をネタにした動画とかあるじゃないですか。苦手なんですよね、あたし」 Aさんはそう言ってから、僕の次の言葉を見越したように慌てて続けた。 「いや別に、動物に対する人間の傲慢さが~とか、そういう何かちゃんとした理由があるわけじゃないですよ。ただもう、ほんとに、単純に苦

禍話リライト「山羊のいた家」(怪談手帖)

Aさんが、お祭の後の宴席――僕はほとんど下戸なので聞き役に徹していたのだが――で話した、山羊に関する思い出。 彼の子供の頃、家のすぐ近所に大きい屋敷があって、所謂地域の名士と言われる一家が住んでいたのだが、その家に一頭の山羊が飼われていた。 外に放していたわけではなく、家の中に特別な一室を作ってそこに閉じ込めていたようだ。 半年に一度だけ禁が破られ、庭先に据えた台の上に山羊が引いてこられる。 その山羊の姿がトラウマなのだという。 全身が痩せてひょろ長く、脱色したようにのっ