八月某日


最寄りから電車で1時間かかる西武線の駅へ用があって向かうことになった。


途中、乗り換えの駅でみかけたNB992を履いた男の人、気だるい雰囲気の、学生かな?なんだか気になるなと思いつつ、10秒後には姿が見えなくなり、2分後にはその存在を忘れていた。


20分後、目的の駅につく。20分前に見た男の人がわたしの数十メートル先を歩いている。そして、静かすぎる商店街の寿司屋にはいった。その並びには、もうずいぶんと昔に営業をやめてしまったシャトレーゼ、ビジネスホテルとお茶屋の兼業、ちっとも動かないおじいさんが店番をする和菓子屋と、隙間からみえる洗濯物。初めてくる場所なのに、この景色のことはずっと昔から知っているような気がした。


用事を済ませて駅へ向かう。後ろに寿司桶をぶら下げたバイクがゆっくりとわたしの横を通り過ぎる、足元は見覚えのあるNB992。はじまった。

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