見出し画像

ベタの新しいタンクメイトと、がめついガメ子の女王物語

少し前に、国産グッピーのつがいを購入した。
ペットショップで、雄の綺麗な尾ビレに一目惚れしてしまったのだ。
夫のシュリンプ水槽へ入れるつもりだったので、店員さんに先住の生体と同居可能かを確認した程度で、衝動買いに近い買い方をした。
仮に、もしも私の水槽に入れるつもりなら、より入念な事前調査をしただろう。
とはいえ、いくら事前に調べたところで実際に入れてみないとどうなるかは分からないのが水槽の世界あるあるだ。

さて、まず驚いたのが、夫の水槽の水流の強さだった。
夫の水槽には、アルビノグローライトテトラ4匹、チェリーシュリンプ2匹、石巻貝1匹が暮らしている。
そこに、グッピーペアを入れたところ、尾ビレの大きな雄の様子が尋常ではなく辛そうだった。
他魚の様子からは何も感じ取れなかったが、余程水流が強いらしい。
それでも暫く様子を見続けていると、今度はブロックの陰に必死に隠れ込む様になってしまった。
なんと、最も恐れていた事態が発生していた。
テトラ軍団にその美しいヒレをかじられてしまっていたのだ。
さすがに可哀想で見ていられず、急遽ベタ水槽に避難した2匹だった。

画像2

その後、暫く平和な時間が流れたのも束の間、今度はベタが泡巣を作らなくなってしまった。
嫌な予感しかしない。
なんとその原因は、グッピーの雌がベタのヒレをかじっていたのだ。

さて困った。
現状、グッピーペアを移せる別の淡水水槽など、もう無い。
最悪、新たにもう1つ水槽を立ち上げるという術は無きにしも非ずだが、極力避けたかった。
日々良く観察しながら丁寧に飼育可能な水槽の数は、現状の3つで限界に感じている。

そこで、閃いた。
雌だけを、夫の水槽に戻せばいいのでは』と。

グッピー購入後に知って、不安に感じていた事があった。
それは、グッピーの強い繁殖力だ。
正直、爆発的になど増えられたら困ると恐れてすらいた。

更に、グッピーの雌の食に対する欲望の強さ凄まじく、あまりにがめついので、私は『ガメ子』と呼んで面白がっていた。
その、見ていて笑える程のがめつさ強烈な個性となり、地味な見た目とは裏腹に、その他大勢に紛れる事の無い大きな魅力を解き放っていた。
ところで、アクアリウムをしていると、ふと深く物事を考えさせられる時がある。
見た目は地味だし、欠点とも思える個性なのに、なぜ魅力的と感じ好感すら持てるのだろう…
おっと、話が逸れてしまった。
いずれにせよ、私の最愛のベタのヒレをかじるとなると放ってはおけない。

ところで、ガメ子のがめつさがあれば、あのテトラ軍団の中に入っても大丈夫な気がした。
雄が受けた洗礼の通り、夫の水槽で暮らすアルビノグローライトテトラは、自分より格下と判断した魚のヒレをかじるのだ。

画像4

集団で生きるタイプの魚は、一般的に大人しいと分類される種であってもそれなりの逞しさを持っているという印象を受けている。
なぜならば、その集団下のあらゆる競争を逞しく生き抜いてきているからだ。
一方、単独飼育を推奨され、闘魚とも呼ばれてるベタなのに、今のところ我が家では、ヒレをかじられる側の弱者の立場ばかりに甘んじていた。
そう、魚同士の相性問題は、さすが生き物だなと感じさせられる奥深さがあって、単純明快な答えにならない方が断然多かった。
なので、『実際に入れてみないと分からない』になる。
という事は、我々のその後の対応如何なのだろうな。

さて、私は、それまで観察して感じ取ってきた雰囲気から、ガメ子ならば、夫の水槽の女王に君臨する可能性すら秘めているのではなかろうかと予見した。
確信に近い自信を持って、ガメ子を夫の水槽へと送り出す決心をする。
達者に暮らせよ」と言いたくなる心境とはこういうものか。

そして今。
あのテトラ軍団の中に身を置いても、ヒレを一片たりともかじられないという伝説を築き上げながら、悠々と暮らす女王ガメ子様なのだった。
あっぱれ、さすがガメちゃん。

画像4

さて、最初こそ雌と別れて寂しがったグッピーの雄だが、実はすぐ隣に置いてある水槽同士なので、互いの姿は眺められるし、今では欠けたヒレも徐々に再生してきており、ベタやオトシンクルスとも上手く共生して穏やかに暮らしている。
オトシンクルス以外でベタと一緒に暮らせるコをずっと探していたので、偶然とはいえ結果オーライだ。
オトシンクルスも、ベタの八つ当たりの的を一身に受け止めていたのが分散され、より一層暮らし易そうに過ごしている。

画像2

無難な落としどころに辿り着けて、実にめでたしめでたし

最後に。
既に魚が入っている水槽に新しい魚を迎い入れる際には、水作のフロートボックスを使用している。
要らぬ様で大きな役目を果たすこのアイテムは、大して高価でもないのに大きな効果を感じており、是非オススメしたい。
かくいう私も、欲しいと思いながらもなかなか買わずにいた口だが、使ってみれば分かる良さだ。
たかが魚、されど魚。
お見合いならぬ様子見合いとでも言うべき時間を設ける事で、水槽に自由に解き放った後、スムーズに暮らし始める姿を見る度に、『あぁ、魚の世界にもきっと色々あるんだな』と感じさせられている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?