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スイート16                 多層世界の別バージョン           第3話

            

ウニョウニョ



SSHD団

次の日、ATO中学の数少ない男子達3人は
朝からそわそわして落ち着かない様子。無理もない、
きのうあんな体験をしたんだから。夢の国からの、地獄の集団感電。
そしてそのあと、彼らはなんか悪だくみしてたみたい。

変なものならなんでも作っちゃうと評判の盛田君がカバンの中から出しながら言った

「約束のTシャツ作ってきたよ。3人分。
部室の業務用プリンタ勝手に使っちゃた。インク代高いからばれたら大変だ。
でも、最高に出来がいいよ。」

「見せて、見せて、わーい、凄いや」

「SSHD,僕たちの称号だー」

「なんか、凄くしょうもないね。だけど、そこがいいんだ。

「学校一の美少女、と言っても女の子3にんしかいないけどね。
セレンのスカートに入った団。 なんかすごく変で字面が悪いけど」」
S    S   H   D

「でもすごいぞ。SSHDだ。わー。周辺機器の名前みたいだ。 わーーー。

男の子たちが自作のロゴ入りTシャツを着て騒いでるところに
主人公が御登場。

「何、何、何、楽しそう。
あー格好いいTシャツ
作ったのこれ、凄ーい。
なんて書いてあるの。どういう意味。
私も欲しーい。」とセレン。

男子たちは慌てふためいた。
大賀君が
「駄目だよ。女子は。」
なんて言うからややこしくなる。

セレンはむくれて
「なんで、女子は駄目なの

秀才の井深君が駄目押し
「ほらほら、だから
とにかく駄目なの
とくにセレンは」

セレンは涙目になっちゃた
「私は仲間外れなの、なんで、どうして」

もっとややこしくなってしまった

放課後男子一同反省会

結論

女の子は大事に扱いましょう
ひどいめにあうぞ



ここでテルルについて

セレンは人間に育てられた記憶が無い。
小さい時に母親は死んだ。父親は後に自分は父親だと目覚めたようだが
そもそも機械にしか興味がない人だった。

科学者であり有能なプログラマーでもあったお母さんは自分の命の残り火がそんなに長くは無いと知っていた。

生まれてくる子が母のない子になると悲感したので
自分が今まで生きてきて感じたこと、知識、経験、記憶やら雑多な諸々をデーターベースにぶち込んだ。
非整然と。そして段々と理路整然と打ち込んで、それを幼い子供がいつでもどこでもひっぱりだして相談できるように
優しい乳母のような言葉で紡ぎあげた。人生の最後の仕事として。

最初は混沌としていた。しかしながら親が子供を育てることによって親になるように、
幼稚な会話マシンだったそれは子供の成長とともに親としても成長していった。

家の中にもラボにも外出してる時にも母親はいつもネットワークの中にいて。
いつもセレンが身に着けてる丸いペンダントの中にもいた。
それが一番大事なことであり、それを作った目的でもあったが
セレンは孤独や寂しさなんて一度も感じたことがなかった。

事情を知らない人がこの母子の会話ごっこをしているのを見て
単なる初期のAI人口知能だと思うに違いない。
だけどそれは、もっと血の通った母親の最初で最後の贈り物だった。

意外とその計画はうまくいった。もともとそれを作った人の人格がよかったのだろうか
そもそも人間らしさが欠落しているパパが育てるよりずっとましなわけで
結果、セレンは明るくて優しい子に育った。

小さい頃セレンはそれをパパから教えられるままに「ママ」とだけ呼んで
いたが、ある時人前でそれをママと呼ぶのが、こっぱずかしくなって
今はお母さんのむかしのあだ名で呼んでいる。パパがお母さんのことをそう呼んでいたというからだ。

「テルルおはよう」って呼び捨てだ。

「おはようセレン。パパは相変わらず朝は起きられないの?
昨日は遅くまでなにしてたの。また一人で機械とにらめっこ?
それじゃまたパパのお鼻に大好きなヘーゼルナッツを突っ込んでらっしゃい
ぶはぁって言いながら起きてくれるわよ。そしたら大好きなお散歩タイムよ。」

「はーーい。」

よく知られたことだけどパパホッチキス氏は完全ソースフリーの考えの持ち主なので
もちろんこのテルルのソースコードは普通にftpやGitで公開されている。
セレンはプログラミングができるようになってからその中身を覗いた。
それを見てどう感じたかは彼女しか知らない。



リチウムイオン電池猫缶爆弾

今日もテレビやネットでは憂鬱になるようなニュースばかりながれている。

次はどこの地方が外国に売られるとか、反対している人たちがゲリラ攻撃をたくらんでいるとか
あんまり暗いニュースばかりなので誰もみなくなってしまい誰も自分の国に
関心をもたなくなってしまった。
国土がどれだけ残ってるかなんて、そこの当事者以外はお天気くらいの関心しかないのだ。

「嘆かわしい。ママや私が愛した美しい土地はたったこれだけになってしまったのか。         
この国は竜のようなカッコいい国土だったのに。
今は昔本州とよばれた土地を残すのみだった」

パパ・ホッチキスは今日もぼやいていたが、ボヤいている間はまだいい、過激なこといいだしたらヤバイから気を付けないと。警察からも要注意人物だとマークされてるんだから。
今日も彼は北海道のレジスタンスが使っているリチウムイオン電池爆弾の報道を見ながら
強烈な駄目だしの言葉をわめいていた。

「駄目駄目駄目。全然だめだ。この映像みたいに爆弾の外装をダクトテープで巻いてちゃ駄目だ
どうもアメリカ人はなんでもダクトテープで済まそうとするからいけない
ボートや飛行機、ロケットまで巻くからなあいつら。」
「あいつらっても。私も元アメリカ人だけどね。」
「それはいいとして、爆弾にするなら電池を頑丈なもんで包まなきゃ。
そうだそこの猫缶で包めばかなりな爆発力になる。
もうひとつ起爆装置もWifiArudinoで遠隔制御しようとしてるな
肝心な時電池切れにならないように、ここはタイマーICとサイリスタを起爆装置にするな、私がつくるなら。
シンプルが一番。」
「ああ、この国じゃそういう部品はもう手に入らないのか。作ってないのか。

「あー嘆かわしい。それにしてもこの国は国土が取り戻せるんだろうか
やはり、テロのことなんか考えないで。私は正道を行く。
スイート16さえできれば、産業が復活するに違いない。
そう信じよう。

物語はねじれて歪んで行ったり来たりしながらスイート16無印に続く。

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