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スナフキンとレンタカー。

夫、スナフキンは自由人で不思議な人であるが、お仕事は営業マンである。

遠方への営業に出る時は、レンタカーを借りて運転していくのがスナフキンスタイル。

電車が1時間に一本しか来ないような、電車もバスもないような田舎町が彼の好みであり、そういう田舎町の良さを都会に売り込んだり、逆に都会の便利さを田舎に伝えたりしている。

とにかく、田舎のおじいちゃん、おばあちゃん、町工場の頑固な職人さんなんかと仲良くなるのがすごく得意なのだ。

スナフキンには、第一印象で『素朴な人だ。』と相手に感じさせるような『いい人オーラ』が出ていて、警戒心を抱かせないマジックを持っている。

悪い奴ならこれを逆手に取ればなんたら詐欺とかでゴッソリ騙すやもしれぬが、彼にはそんな器用なことは出来ないので、そこは安心してよい人物である。

仕事中レンタカーに乗り、信号待ちをしていた時、右折ラインにいた左ハンドルの車がドアを少し開けて閉めなおした瞬間、分厚い長財布をゴトリと落としたことがあったらしい。

拾ってあげて、声をかけようとしたら信号が青に変わってしまい、落とし主は右折していってしまったので、どうしようかと財布を開けて身分証を確認しようとしたところ、なんと一万円札が10枚以上みっちりと入っていたという。

『どうしよう、uniちゃん!こんなあんなで10万以上の財布拾ったんやけど‼︎』

『すっごいやん!スナフキン‼︎』

『やっぱり警察に届けに行くわぁ。人の親としてネコババはできひんわ!』

こういう生真面目さ。ドカ弁にそっくりである。

そんなスナフキンだからこそというか、なんでやねんというのか、たまに物凄いことを前置きなしにしれっと言って、家族を恐怖に陥し入れることがある。

先日もレンタカーでとある田舎町に営業に行っていたスナフキン。

『ただいまー‼︎』

『おかえりー!』

駆けつけ一杯のビールを美味しそうに飲みながら笑顔で言ったのだ。

『あのさー、さっきまでさーオレの車に3人乗ってはってさー!』

『誰か送っていってあげたん?』

ドカ弁が携帯を触りながら、ちゃっかりが髪を梳かしながら、私は酒のつまみをよそいながら、其々が呑気に問いかけたのだった。

『いや、違うねんなー。高速運転してたらさー、いきなりシートベルトを締めてくださいのランプが後部座席に3つ点いてさー!』

『えっ…‼︎ぎゃー‼︎近寄らんといて!』

『やっ!塩まく⁉︎数珠⁉︎』

『しっしっ‼︎誰か連れてきてないやろねっ⁉︎』

女3人を恐怖とパニックにするなら、もうちょっと神妙に前置きしてから言ってくれないだろうか。

『あっ、大丈夫やと思う!途中で、‘乗ってはるならちゃんとベルト締めてね!’って言ったら、しばらくしてトンネル抜けたらランプ消えたし!降りはったんちゃうかなー。』

『ちょっ!アホちゃうかー‼︎余計なこと言って、きちんとベルト締めはったからベルトランプ消えたんちゃうん‼︎』

『あっ!そうかー。ベルト締めはったから消えたんかー!オレは降りはったと思ってんけどなー。』

まったくどんだけまったりやなんや、スナフキンよ。

まぁ、レンタカーは駅前で返却したし、家には来てはらへんやろうという結論に無理矢理したのだから、何が何やらである。

どうやらあかん感じの3人の方が乗ってきはったらしいと感じたら、たいていの人は焦るはずであるが、見えない相手に対しても、ベルトを締めてね〜などと親切に安全について声かけしてしまうスナフキン。

やっぱり彼は只者ではない。


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