⑳母のおにぎり
小学校4年生の時の作文の綴りが出てきた。
つっこみどころ満載のヘタクソな文章に、誤字脱字だらけの作文。
しかし、当時が一気に戻ってくるような懐かしさを感じた。
父も母もまだ若く、妹もまだ小さかった頃、当時10歳の自分はこんなふうに周りを見ていたのかと昔の自分に会いにいったように感じたのである。
自分の母はお弁当を作るのが苦手であった。
遠足のお弁当には必ず、火を入れ過ぎて真っ黒になったタコのウインナーや炭のように焦げたハンバーグが入っていて、極めつけはデカすぎて俵型になっていないスクエア型の寿司詰めおにぎりであった。
どこから箸を入れてもなかなか持ち上げることができない押し寿司のようになったおにぎりを友達の前で食べるのが恥ずかしくてしょうがなかったのを覚えている。
このスクエア型の押し寿司むすびには味付け海苔が巻かれているというより乗せられていて、タッパーを開けると全て海苔が蓋に張り付いていて、海苔が禿げたスクエア型押し寿司むすびは無残な状態になっているのが毎度決まりであった。
何度お願いしてみても、改善される見込みがなく、途方にくれている小学生が取った最終手段を思われる作文を発見した。
これである。
担任の先生に知らせることが出来れば、母も改善する気になってくれるとでも思ったのだろうか。こんな詩を書いて提出していた昔の自分に聞いてみたいものである。
それにしても。
大きな花丸をくれているのであるが、先生からのコメントはなかった。
他の作文には、優しい言葉を書いてくださっている先生であるが、この詩に対してノーコメントであったのは、親に対する先生なりの気遣いであったのかもしれない。
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