必殺!ちゃっかり術。
週末はちゃっかりのピアノのグレードの試験であった。
YAMAHAのピアノを習ってはや6年。
個人レッスンになってから4年である。
まったく練習せず、こちらがやいやい言って試験当日を迎えたちゃっかり。
『ちゃっかりさん、どうぞお入りください。』
名前を呼ばれて試験会場に入るちゃっかりを見送る私とスナフキン。
先日の発表会で弾いた曲、『ラッパ手のセレナード』がドアの向こうから聞こえてくる。
これは奇跡的に間違わずに弾き終えたようである。
次に聞こえてきたのは『シュタイヤー舞曲アルプス地方の踊り』。
あれっ?んっ⁇
『早速つまっとるやないかー‼︎』
小声でスナフキンとぼやく私。
家で聞いたことのない曲まで聞こえてくる。
『こんなん家で聞いたことないで…。』
約15分後、笑顔で出てきたちゃっかり。
『どうやったん?』
『んー。わからない!』
『わからない、ちゃうわ‼︎試験代一万円払ってるねんから!』
『たぶん大丈夫大丈夫‼︎』
『つまってたやんか!』
『先生がね、レッスンの時言ってた通りにはやったから大丈夫‼︎』
『嘘つけ‼︎先生がつまっていいなんか言いはるわけないわ!』
また得意の小嘘ついてるな、ちゃっかりよ。
すると。
エレベーターが閉まるやいなや早口でこう言うではないか。
『あのさ、ちょっとくらい間違っても、はいっ!はいっ!って教官にハキハキとお返事して、笑顔を忘れないって言われてたの!バッチシよ‼︎ニコニコ笑顔しといたから‼︎必殺技使ったから‼︎』
『………。』
絶句である。
毎月、諭吉以上の月謝を納め、発表会の参加費を支払い、フリフリのドレスや髪飾りのレンタル料を支払い、楽譜や教材を定期的に買い、グレード試験の受験料を支払うのは、私たち親である。
しかし、当の本人はこの有り様なんだから、アホらしくて涙がじんわり溢れてきそうである。
継続は力なり。
お稽古ごとはこれが前提にあるから、途中で投げ出さないことが大切なのはわかっている。
YAMAHAのピアノグレード試験は、5級を合格した者は指導者を目指す資格を貰えるシステムである。
ちゃっかりは現在8級。
あと3つの階段を登り切れば、その資格を得ることがわかっているので、親も忍耐のとき、今が踏ん張りどきなのである。
そんな親の気持ちに気付いているのか、鼻歌など歌いながら、ちゃっかりが言った。
『あと3つ試験受かればYAMAHAの先生になれるかもね!ちゃっかり、ファッションデザイナーになりたいけど、無理だったらYAMAHAの先生になれば食べていけると思うの!』
非常に現実的かつ、親殺しの決め台詞である。
しかし、ちゃっかりよ。
あと3つ受かるには最低3年、落ち続ければ5年、6年とかかるのだよ。
笑顔の必殺技だけでは乗り切れない時期が近づいてくるんだよ!
わかっとるのかね、ちゃっかり。
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