速すぎる。
最近Viemoという動画共有サイトをちょくちょく覗いている。
そこには自分と同じ仕事をしていると思われる、書を書く方々の動画が投稿されている。
壮大なBGMの中、滝が流れる様子や、水差しから一滴、二滴と高価そうな硯に少量の水を落とし、ゆったりゆったり墨をする様子が流れていたりする。
また、書を書くと音が鳴る仕組みになっているものを使って、書を書くDJカリグラファーなどという肩書きでショーをやっておられる方の動画もあったり、どぼどぼになるまで墨を筆に染み込ませ、半紙にぼたぼたこぼして、何が何やらな作品を作っておられる書道家と思われる方もいたりする。
それらの動画を観ながら思わず呟いた。
「これってさ、皆さんプロなんよな?なんでこんな迷いながら書いてるんやろ。ゆっくり書いたり、高価な道具を使って書の所作をはんなり見せてるけど、ゆっくり書いたからって傑作が書けるわけでもないと思うなー。3,000円の安い馬の毛の筆でも馴染んだものが書きやすいし、安い筆をわざと潰して書くこともあるしさ!」
すると夫のいつものフフフ…という笑い声が。
「またかよ!フフフってなんやねん!」
「フフフ…あなたの場合はね。フフフ…。」
イラチな自分は夫の言わんとしようとすることが待てない。
「なんよ!はよはよ!何なんかゆって!」
こう詰め寄ったのだ。するとひと言。
「速すぎる。」
速すぎる?書くのが?所作が?
「なんで?ゆったりはんなりが書道家の常識って言いたいわけ?」
そういうと、ニヤニヤしながらノートパソコンを持ってきてクリックした。
「ワイは猿や!プロゴルファー猿や!」
なんと昔懐かしのアニメ「プロゴルファー猿」の動画である。
「なんやねん!これがウチって言いたいわけ!?」
「だってさ、このアニメの無茶ぶりみてみ!手作りの木彫りのクラブ使ってんねんで!それでブンブン飛ばすし、嵐を呼ぶくらいの速さで飛ばしまくるねんで!」
「なんでやねん!猿谷猿丸かよ!男子やん!野性児やん!」
「だからさ、道具選ばず迷いなくバシバシ書きなぐるスピードがさ、フフフ…そういうことかな。雲泉さん。フフフ…」
なんかモヤモヤするわー!野性児ってな。
そんなことをブツブツぼやいている時であった。
突然「プロゴルファー猿」のOPテーマが大音量で流れたのだ。
「ワイはuniや!プロカリグラファーuniや!」そこに続く夫の声。
つむじ風舞うティグランドで狙うはグリーンのターゲット♪
思わず最後まで歌えてしまったではないか!
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