ぼやく人。
人や物やテレビにまで何かと文句を言う人のことを関西では『ぼやき』と呼ぶ。
ぼやきには2種類あって、笑いの取れるタイプと、鼻くそか!と罵りの対象にされてしまうタイプがいる。
笑いの取れる愛されキャラのぼやきは、ブツブツうるさいのには変わりはないが、ぼやく対象が自分自身に向かっていることがオチになるのがポイントである。
『ほんまよーこのボケなすバイクよー!また故障してよー‼︎ま、金がないからケチって安もんをさらに叩いて買ったからしゃーないねんけどな、ボケが‼︎』
こんな感じで周りもうるさいなーお前は‼︎などと言いながらも爆笑しているのだから一緒にいて楽しいぼやきである。
この対極にいる嫌われぼやきだとこうはいかない。
『ほんまよー!オレやったらあんなヘタ打たんわ!だいたいお前らはみんな分かってないで!甘いねんな、だいたい!』
クドクドしつこく相手をこき下ろし、周りがドン引きしていることなど気にも止めずにぼやく。
挙げ句の果てには
『俺が切れるからってな、俺に負けてるからってみんなで僻みやがってな!あんな奴らと仕事なんかできひんわ!』
などと言いながら生ビールのおかわりなんかを頼む。
一昨日友人と飲みに行った店で、全くこの通りのことをぬかしながら、後輩たちにブツブツネチネチやっていたおっさんがいたのである。あかんタイプのぼやきである。
酒も程よくまわり、美味しい肴をつまみながら旨い酒を楽しんでいるのに、このあかんタイプはどんどんエスカレートしていく。
ついに友人と自分は我慢の限界に達してしまった。
『うっさいわ!鼻くそが‼︎最悪な酒やな!酒がマズなるわー‼︎』
あかんタイプのぼやきの席に聞こえるようにほぼ同時に叫んでしまった。
すると、あかんタイプのぼやきはピタリとぼやき声を止めた。
そそくさとトイレに立ち、しばらく戻って来なかった。
その間に残された後輩たちの声がヒソヒソと聞こえてきた。
『どこで逃げる?もう限界や!』
おっさん、大ピンチである。
ギャラリーが逃げ出してはぼやきの出る幕はなくなるのだ。
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