⑲ファッションリーダーちゃっかり
衣替えの季節である。
先日、ドカ弁とちゃっかりの衣替えをするのに部屋中に夏物やら冬物を広げて捨てるもの、あげるもの、出すもの、しまうものの選別作業に追われていた。
ドカ弁の着ていたもの、正確にはほとんど着ていないもので可愛い服がたくさん出てきたのである。
GAPで買った色も形も模様もおしゃれなものなんかがごっそりとクローゼットで眠っていたようである。袖を通さないまま時間が過ぎ去り、サイズが合わなくなってしまった服たち。
「これはちゃっかりに着せよう。気にいるやろ!」
そんなひとり言をいいながらせっせと振り分け作業を進めていったのである。
ドカ弁の服も大量に出てきた。
ちょっとはオシャレをしてもらいたいと、中学生に流行っているショップに行き、買ってやったのはいいが、ほとんどの時間を部活に費やしていたドカ弁の定番ファッションはジャージか、バスパン姿だったので、私服というものを着る機会がなかったのである。
「部活も引退したし、ドカ弁もちょっとはこましな服装をさせんとあかんわ。」
こうしてドカ弁のクローゼットにもきちんと冬物の服をそろえたのである。
夕方、ちゃっかりが帰宅してクローゼットに駆け寄り、
「わぁ!すごい!」
と興奮して喜ぶのと対照的に、ドカ弁はおやつなどを食べながらお尻を掻いて横になっているのである。
「ちょっと!あんたさ、めっちゃ服出てきたからさ!これからはちょっとおしゃれして、こましな雰囲気になるようにしいよ!」
「あー、うん~!いもけんぴ旨いわぁ~」
ボリボリといもけんぴを食べて満足そうなドカ弁。全く興味もないようである。
そんなとき、ちゃっかりの友達が遊びにやってきて、ちゃっかりの部屋で何やら相談しているのである。
よく聞くと、学校で行われる「私のじまん大会」というものに皆で出場するらしい。
「何を自慢するの?」
「ダブルタッチって縄跳びを2本回したところに入ってぴょんぴょん飛ぶやつ!」
「ふーん。それでなんで服が気になるわけ?」
「みんなでファッション決めてるの!あ、これは〇〇ちゃんが当日着る服をコーデしてきたのを持ってきたの!ちゃっかりも今決めているとこ!」
なんと、大縄を飛ぶのに皆でファッションを決めて挑もうと相談しているのであった。
そして翌日の朝、ちゃっかりの姿をみてぶっ飛びそうになった。
ドカ弁のおさがりを自分の服と上手く組み合わせてとんでもなく不思議な、でもそれなりにオシャレに着崩したトータルファッションで決めてリビングに登場したのであった。
与えられたものを迷いなくそのまま着るだけのドカ弁と、自分で一番可愛く見えるよう工夫を凝らすちゃっかり。
寝癖で爆発した髪に水をシャシャとかけてブラシで撫でつけるだけのドカ弁に対して、ちゃっかりは自分で髪を結わえるのである。まとめ髪をするとき用に自分が買っていたスティック状の固形ワックスがなくなったと思っていたら、ちゃっかりの部屋のドレッサーに移動していたようである。
「今日はサイドテールにしてみたの!」
朝からテンションを上げて一回転してポーズまで決めるちゃっかりに唖然としたまま口が開いているドカ弁であった。
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