落とし穴。

JKになって約10日目。

新しい友達もたくさん出来たドカ弁。

クラスの子とのコミュニケーションを図るためLINEにも参加しているようだ。

LINEのトップページに自己紹介を入れている子もいるようで、趣味の合う感じの子たちと親しくなっていくスピードは早い。

そんな矢先、ドカ弁がぼやきだした。

『ないわー!なんやこの子!』

『どうしたん?』

ないわー!の理由を尋ねてみた。

『この子のこれ見て!』

差し出すiPhoneの画面を見てみると、ズラズラと自分の好き、嫌いが書かれている。

嫌いな人 オタクな人
嫌いなもの アニメ全部、演歌
好きなもの EXILE!

なになに?ザイルの大ファンでアニオタが嫌いでついでに古臭い演歌もイヤってことやねんな。

『ザイルファンでアニオタが嫌いなんやろ?だから?ないわー!なん?』

ドカ弁にそう質問してみたのだ。

『いやいや、別にザイル好きはいいやん。ただな、アニメ好きな人もアニオタも演歌好きな人もいるわけやん?いきなりこんなもん書いて好かれると思う?』

あぁ、そうか。
まぁ、好き嫌いハッキリしてるのは悪いことではない。

ただ、まだ新しい環境が始まったばかりで、古くから気心しれた仲間もいない状況の中、これをやってしまうのは危険かもしれないとは感じた。

早速、クラスの子からドカ弁にLINEが次々に入ってきたのだ。

『なに、こいつ。ないわー。ザイル好きの人にわざわざ‘嫌いなもの EXILE’とか書いたら怒るんちゃうん!』

『仲良くなりたくないわー。こんなやつ。』

『演歌好きもおるぞー‼︎ゴラっ〜‼︎』

次々にブーイングのメッセが届く。

文字の自己紹介って恐ろしいなと感じる。

まさにコミュニケーションの落とし穴。

もしかしたらこの子は、アニメには全く興味がないだけで、EXILEが大好きなことをアピールしたいだけだったのかもしれない。

しかしわざわざ嫌いな人、嫌いなものなど書く必要があったのだろうか?

好きなものだけ書いておけば、同じ趣味の気の合う友達が増えるかもしれないものを、自分と違う趣味の人を指して、自分にとって異質な嫌悪感をもたらす存在だという心の声を報告したのは失策だったようである。

しかし、逆にその先入観がチャンスを逃すこともあるかもしれない。

本当は正直で誠意ある人柄で、生涯の友になるやもしれない出会いをしている可能性だってある。

文字でのコミュニケーションも便利で楽しいが、やはり相手と直接話すことで分かることはたくさんあるに違いない。

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