クリスマスは突然に。
子どもの頃クリスマスは待ち遠しい日であった。
「ウチは仏教徒なんやから!」
そう両親は言っていたが、楽しみにしている自分と妹のために毎年何かしらのプレゼントとケーキやチキンを用意してくれていた。
気分だけでも盛り上がろうという母の考えだったのだろうが、クリスマスの夕飯時には、子ども用シャンメリーという甘ーいシャンパンのジュースみたいなのを毎年用意していたのだった。
あれはたしか小学校5年生くらいのことだったと思う。
例によって母が用意した料理を前にシャンメリーが登場し、その年に限ってわざわざクラッカーまで準備されていて、
「メリークリスマス!!って言ったら、uniちゃんたちはこのクラッカーをパーンって鳴らして、お父さんはシャンパンをポーンって開けてよ!」
こう説明する母に家族全員頷き、おもむろに自分のクラッカーやシャンパンを手に持ち、それぞれの役割を果たすべく備えたのである。
「じゃ、やるよ!せーの!」
「メリークリスマース!!」
自分と妹が勢いよくクラッカーの紐を引き、パーンいうと音が鳴り響いた。
次に父がシャンメリーをポーンと開けた。
バーン!!がしゃーん!
ものすごい音がして一瞬何が起こったのかわからなかった。
なんと台所の上の電気カバーにあたり電気カバーが落ちたのである。
電気カバーは外れただけで済んだのであるが、中の電球が割れてえらいこっちゃな状況になってしまったのであった。
「お父さん!!もう!なんで電気に向かってなんか蓋開けたんよ!?」
母はカンカンである。
「あー悪い悪い!」
お気楽な父はまるでちょっと失敗しただけやん!の軽さの謝罪である。
やいやい大騒ぎになったあと、台所の流しの蛍光灯と隣の居間の灯りを頼りに割れた電球の掃除をし、ようやく落ち着いたのであるが、やはり電気がないと暗いのだ。
幸い電球の替えがあったので、交換することになった。
「電球の交換はお父さんに任しとけ!」
名誉挽回のチャンスとばかりに父が踏み台に上がり、電球を取り換えた。
パッと灯りがつき、皆で
「わぁ!!やった!さすがお父さん!!」
そう言って拍手し、めでたくクリスマスパーティを再開しようとしたそのときである。
がしゃーん!!
再びものすごい音が。
なんと付けたばかりの電球が外れ、電球カバーと一緒に再び落ちてきたのであった。
「もう!!お父さん!!何やらしてもほんま頼りにならへんわ!電球くらい私が替えたらよかった!!」
しっかり電球をはめ込んでいなかったため、電球が外れ、その重みで今度は電球カバーごと落下させたのであった。
下から当てて落とされ、上から外れて落とされ。
電球も子どもたちもとんだとばっちりである。
こうなるともうクリスマスパーティどころではない。
クリスマス気分を盛り上げようとかけていたカセットテープから厳かなムードの”きよしこの夜”が虚しく流れていたことが切なく思い出される。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?