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もう終わった。

帰宅したちゃっかりがランドセルを開けた。

なんだか怪しげなプリントを発見したが、サッと隠すように蓋を閉めようとするちゃっかり。

ランドセルを奪い中身を確認すると、対照の図形を作図する算数プリントが全て出来ていないのである。

適当に描いているため、頂点がずれており、なんちゃって対照の図形が仕上がり、先生が赤ペンで添削してくださっている。

『ちゃっかり。コレは何?』

『えっと図形を描くやつ。』

『出来てないよね。しかも1個も!』

『もう終わったからいいの。』

『これが全然出来てないのに、次に進んだら更に出来ひんと思うけど!』

『大丈夫!ほら!50メートル走も毎年1秒くらいずつ速くなってるし!来年には分かってると思う‼︎』

ガクーンである。

何でや⁈何でこの子はいつもこの調子なんや‼︎

思い返せば保育園の頃からそうであった。

運動会の障害物競争で、最後に跳び箱を飛ばなければならないのに、自分の順番になると回れ右し、列の最後尾に逃走して上手くチョロまかしたつもりになっているような子であった。

来年になれば出来るだろうという希望的観測を先に自分に許し、何となく翌年になると出来なかったことが出来るようになっている成功体験が大きな自信になり、猛烈な勘違いをしているようなのだ。

ため息をつきながら、そのまま買い物に出掛けたが、帰宅するとドカ弁がちゃっかりに作図を描かせて必死で教えていた。

親の言うことは聞かないが、ドカ弁に、『ちゃっかり!今やっとかなホンマに中学入ったらヤバイで!』などと脅されると素直に、『ドカちゃん、教えてちょうだい!』と言えるようなのである。

『ちゃっかりはね、算数が嫌いなだけ‼︎国語はね、大丈夫‼︎ほーら、漢字のテストは95点‼︎1個だけよ!間違いは‼︎』

ドヤ顔で渡してきた漢字テストがこれである。

どれどれ。ほぉー。ん?んんっ⁉︎

なんじゃこれはー‼︎

人聞の脳。

間が聞になっているではないか!

しかも。
にんげんは既に習った漢字。
今回メインで問われているのは、『脳』である。

ちゃっかりよ。
『人間』の『脳』をナメずに、学習の貯金をしていかなければ、来年泣くのはあなたなのだ。

そんな親の気持ちが伝わったのだろうか。翌朝はササッと起き、素早く朝ごはんを済ませるちゃっかり。

真人間になろうとしているのか?

いいよ、いいよ!
ゆっくりでもいい。自分に甘い習慣を少しずつ変えていこう!

そんなことを思いながらお弁当を詰めていると、背後からシュッ!っという音が。

そして親しみのある香りが漂ってくる。

これは…。
自分の香水の匂いじゃないか!
JSが朝から香水で身支度中であった。

『このオシャレ馬鹿‼︎』

全然わかってへんねやないかー‼︎

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