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㉒ぴょん吉

夫の友人にぴょん吉という子がいる。
あまりに不思議で面白いので自分も彼のファンなのである。


ぴょん吉とは長らく会っていないのであるが、先日久々に夫と話している時にぴょん吉の話が出たので帰ってきた夕刊UNIに書こうと思う。

誰でも一人くらいは変わった友達がいるってケースがあると思うのであるが、ぴょん吉はその変わった友達の中でも、圧倒的上位を占めるなかなかの変り者なのである。

ぴょん吉は、淡路島出身の男の子である。

彼が学生時代、淡路島で漁業関係の配送のバイトをしていた時の話をしてくれたことがあったのであるが、これがもうハンパなく面白く、ぴょん吉ならではのエピソードなのであった。

「あのね、ボク、一回エライことになったんですよ!」

ぴょん吉の話はいつもこの出だしから始まるのであるが、その”一回エライことになったんですよ!”が一体なんぼほどあるんじゃ!と突っ込みたくたるほど、ありとあらゆるエライことが彼には待ち受けているのである。

そんなぴょん吉の”一回エライことになったんですよ!”のひとつを今日は紹介しようと思う。

「ボクね、トラックで狭い商店街の角を曲がろうとしたときにね・・・。」

「ふんふん。」

「なんでかしらんのですけどね、トラックの後ろに積んだ水槽の水が重すぎたんかしらん、コーナーで曲がりきれずにね・・・。」

「え!人でも轢いてもたん!?」

「いやいや・・・。それがね、そこの角の洋品店っていうんですか?ブディックっていうのとは違う感じのおばちゃんが好きそうなお店ってあるでしょ。そこの店にぶつかってしまってね!」

「そりゃえらいこっちゃ!!」

同時に夫と叫んだのである。

「それがね、その時にね、なんでかしらんのですけど、ぶつかった衝撃ですかね、トラックのロックレバーが外れてしまってね・・・。」

「まさか!?」

「そうなんですよ!その洋品店にね、魚が入った水槽の水がザッパーン!!ですよ!!店のおばちゃんはめっちゃ怒るしね、一生懸命謝ろうとするんですけどね、洋品店のマネキンも売り物の服もびしょ濡れになってね!」

「あかんあかん!!それはあかん感じや!!」

爆笑しながら夫と自分でぴょん吉にツッコんだのであるが、ぴょん吉は真剣そのもので、笑いもせずに話を続けるのである。

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