ほどよい田舎。
先日、ちゃっかりとスナフキンがJA系のお店が募集していた、「スイートコーン収穫体験」に参加してきた。
前日にはコーン農家の方から電話があった。
「明日ね〜雨降ったら虫がいっぱい出るからね〜長袖に長ズボン着て長靴履いて来てちょうだいね〜!」
ちゃっかりとスナフキンを呼び、電話の内容を伝えた。
案の定というか、当然の反応なのか。
「えーっ‼︎ダサいー‼︎」
ちゃっかりからのブーイングの声が。
ちゃっかりよ。あんた何しに畑に行くのだね?収穫体験やで。
そんなこんなをクリアして当日を迎えた。
「おはよう〜!」
そう言って二階から降りてきたちゃっかりの格好を見て吹き出しそうになった。
黒い長袖のカットソーにチャコールグレーのゴムのウエストの長ズボン。
まさに農作業向きのファッションなのであるが、彼女が着ると違和感がハンパないのだ。
姿見の前に立つちゃっかり。首をかしげている。
すると突然振り返り、無言で二階に駆け上がっていくではないか。
再び降りてきた姿は。
チャコールグレーのゆるゆる長ズボンではなく、タイトなインディゴブルーのジーンズに変わっていた。
自分なりに許せる範囲の格好に着替えてきたらしい。
「行ってきます‼︎」
ようやく親子2人で出かけていった。
2時間ほどして帰宅した2人の両手には、抱えきれないほどのもぎたてのスイートコーンが。
農家の方がサービスだと言って大量に持たせてくれたらしい。
学校の友達も結構参加していたと興奮気味に話すちゃっかりの話を聞きながら、もぎたてコーンを茹ではじめた。
農薬もかかってないから生でも食べれると言うので食べてみると、お砂糖がかかったみたいに甘くて柔らかい。
今まで食べたコーンの中で間違いなく一番美味しかった。
幸せそうな顔で自らがもぎ取ったコーンを頬張るちゃっかりの丸顔も、茹でたてのコーンのように弾けそうである。
こんな私たちの町は、本当の田舎というわけではない。
車で10分走れば、映画館も大型ショッピングセンターもスポーツジムもある。街に出るのも電車で30分あれば着く、そんなほどよい田舎町である。
今は田植えが終わった時期で、小さな子を連れた親子連れが、虫取り網で田んぼの蛙やカブトエビを取ろうとしている姿をよく見かける。
夜、窓を開けていると蛙の合唱がうるさいくらいの、のどかな田舎。
この町は私が育った場所でもある。
人口も増え、駅は美しく立派になり、なにかと便利になったが、昔から変わらない場所もまだ残っている。
子どもの遊び場や学び場が残る町。
稲作作業の田植えから収穫までの体験授業を行う小学校に我が子が通う町。
庭のバナナの葉の窪みに住み着いた蛙もいるくらい、安全で住みよいこの町は、やはり「ほどよい田舎」である。
現在「ほどよい田舎」に映るこの町を作り出したシニア世代が目立ちはじめた今日であるが、このいい塩梅の「ほどよさ」を守っていくことは、私たちの世代に託された課題のように感じている。
子どもたちがカブトエビや蛙を捕まえてみたいという気持ちを叶え、もぎたて野菜に齧りつける経験が出来る環境。
大地も水も美しいからこそ生き物は繁殖し、作物はしっかり実る。
貴重な財産であり、私たちの宝でもあるのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?