褒める。

天才じゃない限り、人は努力する。

ドカ弁のクラスメートにめちゃくちゃ賢い子がいるらしい。

授業中はいつも寝ているが、学年で1番の成績だそうだ。

彼はいつも周りにこんなふうに言うらしい。
『あいつらあんなに真面目にやって、先生に媚び売って俺よりアホやん!』

ドカ弁からそんな話をよく聞かされていたので、始めのうちは適当に
『天才は言うことが一味違うな!』などと返事をしていた。

しかし話を聞くうちに、彼は少し大人びた子だと感じるようになっていた。

いくら天才でも寝ているだけで満点ばかりは取れないはずだと。

最近になって、ドカ弁がその子の隣の席になり、なんとなくよく話をするようになったそうだ。

彼がテストであまりにも素晴らしい点数を取るので、ドカ弁は素直にこんなふうに声をかけたそうだ。

『ほんま賢いなぁ!すごいわ!めっちゃ勉強してるやろ⁉︎』
そう言って彼を褒めたらしい。

『夏休みオカンと一言くらいしか喋らんかったわ!めっちゃ勉強したわ!』
そう言ってニヤリと笑ったそうだ。

その話をドカ弁から聞いて、あ、この彼は元々すごく頭はいいんだけど、あまり周りに褒めてもらえなかったんやろうなと感じたのである。

『いっつも寝てるくせにな!』
『頭いいからって態度悪いから3しかもらわれへんねん!』
『頭の作りが違うやつに勝てるわけないわ!』

こんな言い方ばかりを周りにされていては、死ぬほど努力している自分を見せられなくなってきても仕方ない。

先生も出来る彼には厳しく辛い評価ばかりを与えているのだから、彼は彼なりの反抗をしていただけなのではないか。

彼だって、やっぱり君は素晴らしいねと褒めてもらいたいはずなのだ。

出来ない子を褒めてやる気にさせるばかりのやり方では才能を潰す。

その彼のノートは必要最低限のポイントしか板書していないそうだ。

しかし、先生の満足するノートはキチンと全ての内容を丁寧に書くノートである。もちろん彼の評価は最低のCらしい。

小さなポイントで最大限の能力を発揮する彼のどこがC評価なのだろうか。

ノート提出は大切だが、綺麗に纏められただけで頭に入っていなければ、力はないのだ。それでも先生が頑張っていると判断すればA評価になるしくみだ。

褒められることは人に力を与え、能力を伸ばす手助けになることは間違いないが、私が先生なら彼にこっそりA評価を与えて、よく頑張ってるな!と言ってあげたい。

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