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㉔練り合わせ

本日、ドカ弁とちゃっかりの氏神様のいらっしゃる神社の秋祭りに行ってきたのだ。

各地区から、男たちが布団太鼓のだんじりをかく(担ぐ)姿がとても勇ましく「オンナコドモはあっちいっとかんかい!」のピリピリした空気に包まれ、神社の中はまさに古来からの習慣通りの「男の世界」を表していた。

見た目にいかついあんちゃんたちが、自慢のだんじりをかいて、怒号で気合いを入れながら宮入してくる様子をライブで観ていた。

だんじりの練り合わせをよその地区と境内で競うのであるが、これがまた面白い。

むちゃくちゃ気合いを入れて、一見チーマーかと思うような、いかつい格好のヤンキー風味の地区のだんじりが思うように上がらず、皆の息が合っていないのが露呈し、紳士然とした大人の男たちが担ぐだんじりが美しく青空めがけて高らかに担がれるのを目の当たりにし、やんややんやとヤジが飛ぶのであった。

「もう皆飽いてまうわ(飽きてしまう)!いっこもだんじり上がらんやんけ!」

お酒が入った地区の長老たちは、お怒りの様子である。

焦るチームの頭は、派手なはっぴに恥じぬよう、大声を上げて叫ぶ。

「おまえら!しっかりかかんかい!!」

チームの頭がいくら怒声を上げてみても、皆の意識が違う方向を向いている、自分だけがちょっとかっこよく目立つことばかりに気がいっているような地区のだんじりは、あっちこっちにぶつかり、だんじりはすぐに傾き、まともに見せ場を作れなかった。

これを見ていたドカ弁がぼそりと呟いた。

「こっちの息の合ってるチームは皆が一生懸命他の人のことを考えて力を出し切ってるんやわ。作戦もきちんと立てて打ち合わせからチームの声をキチンとリーダーが聴いて、良い所をちゃんと皆で認め合って当日を迎えたからこんなにカッコよくだんじりが上がるんやわ!」

ほんまやな、ドカ弁。一生懸命のがかっこいいよな!

そんなふうに思いながらドカ弁のつぶやきを聴いていた。

今度はあかん感じのチームを見て、またドカ弁が呟いた。

「ここはあかんわ。打ち合わせをちゃんとしてないのが丸わかりやな!力自慢したいのは分かるけど、えーかっこしようとして、あの力持ちな人らが前であんな勢いで担いでも、後ろの方は背の小さい人や高校生くらいの力がない人ばっかりやん。バランス取れんで当たり前やわ!ガーーーーっ!!リーダーがみんなの意見聴いてないからやわ、絶対!」

企業であれ、地区のだんじりのチーム頭であれ要するに同じことである。

リーダーたる者、全体も見渡して、個人の個性の活かし方を見極めえる度量が無ければ、会社もだんじりも上がらず、傾いていくわけだ。

そうそう。
我が力量のなさをチームの者のせいにするリーダーはかなりみっともない。

ドカ弁と大口を開けてイカ焼きを食べている横を、真っ赤な顔をして
「おーら!全員ここに呼んでこんかい!!」と叫ぶ、あかんかったチームの頭は、すでに皆をこき下ろす準備をしていたのだから、反省していないようだ。

そこに呼び出される側のメンバーの声が聴こえてきた。

「そんなん言われてもなぁ、打ち合わせもそんなしてへんし、意見の練り合わせもほとんどなしやったからなぁ・・・。いきなりの練り合わせは無理やねん!!」

思わずドカ弁と顔を見合わせ、爆笑したのであった。

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