今すぐ。

日曜日の早朝に電話が鳴った。

昨日は愛すべき女友達と久々に男酒を楽しみ二日酔いのunimamである。

そんな嫁の寝起きの悪さを良く知る我が家の夫、スナフキンが素早く反応し、鳴り響く電話を取ってくれた。

『はい!おはようございます。えっ⁉︎はいっ、はい…。』

何やらたてこんだ話のようである。

まさか誰かの具合が悪いとか?
こんなボロボロの二日酔いで病院とか行けるんかなぁ。

そんな心配をしながら体を起こし、電話が終わるのを待った。

『何⁉︎誰から?誰か倒れたとか⁉︎』

矢継ぎ早にスナフキンに質問。

するといつもの『フフフ…。』という笑い声が。

『何やねん‼︎どないやねん‼︎』

痛むこめかみ辺りを押さえながら答えを急かした。

『あのさ、お義母さんがさ、実家のテレビ、一階も二階も映ったり消えたりしてかなわんのやわー。壊れてしまったんやろか⁉︎イオ光とか配線がどないかなったんやろか⁉︎ってめっちゃ焦ってはるねん。』

またかよ!
イラチの我が母よ。
先ずはコンセント抜いて入れ直すとかないんか⁉︎

『とにかくさ、今すぐ見て!って感じやったから俺実家に見に行ってくるわ。』

お人好しのスナフキンはそう言って実家に出向いていったのである。

小一時間ほどして戻ってきたスナフキンの顔は煤がついたように黒くなっていて、まるで煙突掃除屋さんのようである。

『チムチムチェリーやん‼︎』

汚れた顔を拭いてあげながら事情を聴くと、実家のベランダと実家のお隣さんのベランダに足をかけ、二階の屋根下についた分配器が正常に動いているかを雨が降る中点検してあげたという。

顔をチムチムチェリー状態にしてまでテレビが壊れていないかを確認してあげたというのだから、スナフキンは本当に親孝行な娘婿である。

テレビが消えた原因はMITSUBISHIのテレビが不具合を起こしていたからだったらしい。

実家のテレビは二台とも同型のMITSUBISHI製品だったため、家のテレビ全てが映らなくなってしまったのだ。

年寄りの朝は早い。
5時半から観る『時事放談』を観ようとスイッチを入れてみたらテレビが映らない。日曜日の朝の楽しみを奪われ、悲しみに暮れていたようである。

それにしても、である。
雨降る日曜日の朝、今すぐ何とかならないか⁉︎な電話をよこすとは。

『頭も痛いし、一眠りしてからちょっとひと言ゆーてやらんとあかんわ!』

そう言って再び二度寝した後、重い体を起こし、お昼御飯の支度に取り掛かった12時過ぎ。電話が鳴った。

イラチ母である。

『あ、unimamちゃん!お母さんです!
おかげさまでね、スナフキン君が来てくれてね、今ちゃーんとのど自慢観れてますー‼︎』

『ちょっとテレビぐらいで朝からお騒がせすぎな‼︎』

『だって…唯一の娯楽やもん‼︎』

今すぐ。

テレビっこ老人の執念である。

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