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おじいちゃんの命日。

半年前にカテーテル手術を行った父が、お医者様曰く「半年前のカテーテル手術のメンテナンス」を行うために昨日から検査入院していた。

半年に一度定期検診を受けるように言われていたが、再びカテーテル検査をしなければならないとは。

落ち込んだ父はそわそわ落ち着かず、その父の相手に疲れた母は愚痴をこぼし、まったく二人の大きな子どもをお守りする気分で過ごした10日間であった。

検査入院を言い渡された6月16日は、父の妹であり私の叔母にあたる、みよちゃんの命日だった。

父はすっかり忘れていたようであるから黙っていた。

なぜ黙っていたかと言うと、なぜか我が家に関わる身内は、16日という日に亡くなる人がやたら多いのである。

叔母のせっちゃん、みやこおばちゃんも月は違うが16日に亡くなっていて、父が「16日はあかん!」などと気にして怖がるからである。

ところが、孫の中でもダントツに溺愛しているちゃっかりは16日生まれなのだ。

しかしそこは別物らしく、嬉々としてバースデーケーキの予約に行ったりするのだから、何が何やらなのであるが。

そして本日6月26日は、祖父の命日であった。
父のお父さんである、音吉さんは、91歳まで長生きした人である。

まさか、おじいちゃんの命日に息子である父がカテーテル検査を受けるとは。

偶然なのか必然だったのかはわからない。

不思議なことに、私も妹も昨夜なんだか亡くなった身内がたくさん出演する夢を見ていたのだ。

私はきっちり午前2時の丑三つ刻に夢から目覚めて、怖くなり、スナフキンにトイレに付いてきてもらいたいほどであった。

父のお父さんである祖父の音吉さんは、私の夢にも妹の夢にも出てこなかったが、もしかしたら父の夢には出てきたのだろうか?

11人の子どもの中で一番手がかかる息子だったという父を心配し、一番可愛がっていたと、父と同じような顔と声と方言を持つ父方の叔父や叔母から散々聞かされていたから、なんとなく祖父が父を見守りに訪れていたかもしれないなと感じたのだ。

昼食を抜いて行ったカテーテル検査を終えると、
「どうしても腹が減った。ところてんとおにぎりを買ってきてくれ!」とせがみ出した父。

コンビニの塩むすびをほうばりながら、「旨いなぁ!」と言った途端、栄養士さんが現れ、老人に話しかけるように大声でやたら長い馬鹿丁寧な糖尿食についての講釈タイムが始まった。

やっとありついた昼食を一口食べただけで中断された父。

話は上の空であり、そろそろと手は一口齧ったばかりの塩むすびに伸びている。

齧り付きたい衝動を抑えきれない様子がバレバレなのだ。

長く丁寧な糖尿食講習を実施中の栄養士さんの前で食欲を隠しきれない父を見て、思わず父の手を押さえ、メッ!と睨みつけ
「ストップ‼︎」と言った私。

父とて大人である。

自分の病気のためにやってはいけない食事の指導をしてくださっている人の目の前で塩むすびにかぶりつくなど失礼なことだということは理解しているはず。

しかし今日のあの、夢遊病のような父の動きは不思議すぎた。

もしかしたら。
おじいちゃんが父の横に立ち
「はよ食べ!ミツ‼︎腹減ったやろー。可哀想に。もう食べさせまっせ!姉さん!」

そんなことを栄養士さんに言いながら、父に食事をさせようとしていたのかもしれない。

もしもいつの日か、ドカ弁やちゃっかりが年老いて病にかかり、父のように食事制限の話を空腹時に長々と説明されるような状況になったとしたら。

「はよ食べさせてやってくれませんかね〜。この子お腹空いたらあかん子ですねん!」

そんなことをやいやい言いに私も登場しているのかもしれない。

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