詩ことばの森(176)「白い夢」
白い夢
朝方の窓辺は 白い夢となり
僕は故郷の庭を思い出していた
灰色の土に 赤いダリアの花が咲き
鳥たちは忙しげに鳴きはじめる
季節ごとに 暗示された一日を
それらの積み重ねである一生を
静かに あるいは重く
夢は語りだす
古い家の記憶はおぼろげだが
人の気配はたしかにあって
台所ではお湯の沸いた音がしている
さっきまで誰かが佇んでいた庭は
こもれびに淡く照らされている
誘われるように 後ろを振り向くと
裏木戸がわずかに開いていて
風もないのに不思議な姿で
いつまでも 揺れていた
(森雪拾)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?