詩ことばの森(188)「(雨がふりはじめると)」
(雨がふりはじめると)
雨がふりはじめると
土の匂いがした
ぼくは森の道を歩いていた
道は薄暗くて
迷いそうな気がした
僕はゆっくりと歩いていた
足の裏で居場所を確かめるように
やがて 道は泉にたどり着いた
水は澄んでいたが
夏闇の森を映して
底のない深さを漂わせている
ぼくは そっと覗いてみた
暗い闇だった
どこまでも暗い闇だった
僕は自分の存在すら
すでにわからなくなる気がした
(森雪拾)
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