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「注文なんかいらない料理店」 25

奥さんと長男から「その縁が欠けた茶碗を写すのはやめたら」とずっと言われています。

この茶碗は、かつて瀬戸窯業工業高校セラミック科の陶芸部に在籍していた次男が焼いた茶碗です。
気に入っているし、大切な茶碗です。

確かにいちいち投稿しなくてもいいようなくたびれた夕食を写真に収めて公開していますが、綺麗で映えることなんかどうでもいいんです。
料理ではなく、食事が大切なように。
料理ではなく、料理をしている生活をお伝えするためだから。

先日実家に寄った時、慢性腎炎で透析通院となっている父が漬けた日野菜の漬物をもらいました。
腎炎の父は腎機能がほぼ無くなった状態です。
もはや自力でほとんど排尿ができない、それが腎機能を失うという現実です。

漬物が命だった父は、おそらくそれにより致命的なまでの塩分摂取を気付かぬうちに継続してしまい、それにより腎炎に至ったのではないかと思います。
塩分を摂れない食事節制の中、自分が食べることができないのに漬物を作っている。

名古屋で日野菜の漬物を知っている人はほとんどいません。
日野菜自体もほとんど売っていない。
父が漬ける日野菜をいただき、たぶんそれはあと何年後には永遠に失われる。
その後、おそらく僕には日野菜を食べる機会は一生こないでしょう。

欠けた茶碗と日野菜を眺めながら、もののあわれとはこんな身近なものなんだと想いを馳せました。

今日はポークピカタを作りました。
市販のチューブのデミグラスソースを酒でのばしソースとケチャップとハーブミックスを加えて加熱してアレンジしました。

おいしくいただきました。
ごちそうさま。

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