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大企業におけるイノベーションの壁

大企業がベンチャーのような変革を起こせない理由には、経営の問題、現場の問題、人事の問題があるように思われる。

経営の問題では、
・現有する量産設備の償却の問題
・経営層の新規事業への決断の問題
・社外取締役説得の問題
・売上見通しと株主説得の問題

現場の問題では、
・人員のスキルと再配置の問題
・管理職による人事評価の戸惑い
・内部からの反発
・品質保証の考え方踏襲の問題

人事の問題では、
・斬新な考えを求める人材の採用と教育
・現行の評価制度のアンマッチ
・現行の昇給昇格制度のアンマッチ
・既存事業と新規事業の社内制度適用のバランス

新しいことを模索するのは楽しいことだが、現行の組織の中で育まれた伝統や仕組みに当てはめようとすると、無理や反発が生じる。無理を作りだしているのは人であり、従来の予測可能な状況から未知の領域へ足を踏み込むことを、ためらうのは仕方のないことなのかもしれない。

旧来の日本は量産技術を向上させながら発展を遂げてきたが、誰が作っても同じ品質の製品を作り出す事が出来る様に、図面の書き方、部品の測り方を決め、製造マニュアルを作り、道具の置き場所まで決めて歩んできた。組み立てに要する作業あたりの時間を測り、1日に作る量を決めることで、生産計画は立て易く、原価計算や売り上げ目標も精度良く作ることができ、安心して経営会議にはかることができた。

実績と根拠が明確で、予測可能性が高いというのは、経営層や管理職など責任を取る立場の人間にとっては大変ありがたい。営業や製造、購買や品質保証に携わる者にとっても、先輩たちから引き継いだノウハウが仕事の全てであり、太い幹をさらに太く頑丈なものにすることが、大企業の使命の様なところもあった。

しかし販売が鈍化し、長期の事業見通しが難しくなってくると、経営、現場、人事のそれぞれの立場で、新しい風は感じたいが、完全に納得のできる空気として吸い込めないジレンマが存在し、壁になっていることが推測できる。

別な見方をすれば、安定した同一品質を得るために出る杭を打ってきた日本人の気質が、予測できる範囲の進歩は求めるものの、予測のできない斬新なものは無意識のうちに出る杭として打ってしまう行動になっているのかもしれない。

brog

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