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BCP

BCP(ビジネス・コンティニュティー・プラン)は、災害発生後に「事業を継続する」ことを目的として、やるべきことを決めておく活動計画です。

災害想定は、避難訓練と同じように考えますが、災害がおさまってからのことを計画するものです。また、予防措置にも重点を置いて検討していきます。

まず災害想定ですが、火災や水害を想定したBCPの検討は少なく、一般に地震被害想定です。震度6強または震度7によって会社の建物や設備が、どの程度被害を受けるかシミュレーションから始めます。

防災科学技術研究所が公表している資料などで、会社の所在地近くにある断層や、その断層の活動による震度予想などがわかると、よりリアルなシミュレーションが始められます。

1981年以前の建物であれば、建物そのものが復旧できないことを想定しなければなりませんが、耐震補強がされていれば、1981年の建築基準以降の建物と同様に建物損壊は軽微と判断します。

そして、必然的にBCPの対策本部は耐震性能が一番高い建物への設置を計画します。

あるいは、震源から離れた別の拠点があれば、そちらを対策本部の設置拠点とする選択もありますが、その拠点ごとの機能が、例えば営業拠点なのか、製造拠点なのか、サービス拠点なのかによっても対策本部設置の可否は変わってきます。

BCPの本部隊を設置して実際に指揮することになる内容は、どの事業をどう復旧させて会社を継続させるかというものです。もう少し具体的には、どこの拠点を優先して復旧させ、どの事業を優先して稼働させるのか、ということになります。

人命最優先で社員を一番に考えるとしても、次に会社としてどの事業を優先的に稼働させるのかは、経営会議などに諮って決めておく必要があります。

BCPは、公共インフラ系の会社では高い完成度で構築されており、その系列ファシリティ関連会社などにコンサルをお願いすることもできますが、結局のところ会社や経営層がどの事業の継続を優先して考えるかで、やることは大きく変わってしまいます。

例えば製造業の場合、お客様向けサービス部門の立ち上げを最優先として、次に保守部品や消耗品・サービス部品の供給を欠かさないようにすることになるでしょう。

すると調達・製造部門でも、優先的に取り組む内容が決まり、そのための調達先の二重化や製造設備の復旧も優先順位が決まってきます。そして、研究開発や技術部門はサービスや製造の応援という形になると思います。

研究開発や技術部門でも、設計図や技術データが会社の資産として重要になるので、バックアップ手段(いつ、誰が、どこにバックアップするのか)などもBCPのなかで考えておくことになります。

このようなシミュレーションを重ねると、それぞれの部署ごとに、何をすべきかが決まるので、人や物の調達と手順書をそれぞれの部署が準備することになり、それがBCP(プラン)になります。

さらに、課題の抽出とシミュレーションができるということは、予防策の着手にもつながります。

特定の商品の在庫を多めに待つ、その商品を生産するための材料や保守部品を多めに調達保管しておく、その商品を生産する建物の耐震を優先して補強しておく、その生産設備や建物に非常用電源を接続しておくなど、関連する予防策が次々と発生します。これもBCPです。

BCPは言うのも書くのも簡単ですが、実際にまとめるのは大変です。

経営層の考えを受けて、会社の中を横断的にまとめなくてはプランが固まらないからです。

そこで横断的に会社組織を見ることができる総務が担当になりやすいのです。

私自身何度か経験したのですが、各部署がそれぞれ手順書を作り、それを持ち寄って集まって話を始めると、自分の部署が優先順位が高いという発言がほとんどになります。

予算の獲得といち早い成果の達成に向けて、うちの部門は優先度が高いと、みんなが手を上げはじめて、その中でさらに優先順位をつける必要がでてきてしまいます。

しかし、総務などの担当者レベルでは全員を納得させる優先順位を決めることは難しく、本社機能の内部統制部門やリスク管理部門を頼ることになります。

しかし、本社部門でもさらに他の拠点との予算の割り振りや優先順位付けに悩む結果となってしまい、BCP活動としては、なかなか進まないのが実情です。

インフラ系の会社は基幹事業がひとつに絞られていることが多く、本社機能以外はどの拠点でも同種の業務展開をされていると思うのですが、製造業などでは、本社拠点のほかに、営業拠点、サービス拠点、製造拠点、開発拠点、研究拠点など、業務ごとバラバラに存在していることが多く、本社機能の中でも全体を統制して牽引できる人、責任を取れる人は現れないことになります。

製造業の総務でBCPがなかなか進まない理由の一つではないかと思います。

取締役クラスを筆頭に、BCP専門部署を作らない限り、まとまらない気もしますが、インフラ系の会社はこのあたりの考え方や体制もしっかり確立されているのではないかと思います。

皆さんの会社では、どのようにされているのでしょうか。

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