光の教会 安藤忠雄の現場

安藤忠雄の代表作の一つである「光の教会」についてのノンフィクション作品。施主が教会を建てようと考えたところから竣工・その後までを施主・建築家・工務店など色々な目線で書かれている。特に設計事務所の担当者、工務店の現場所長からの目線も多く書かれていて、建築家目線だけの一方的な話しでも無いし、逆に施主目線だけの話しでも無い。建物を中心としてしっかりとそれぞれの想いが描かれている。

この建物は学生時代に直接訪れた事が有り、その建物の雰囲気も知っている。だからこそこの本で書かれている内容も良く判り、凄さも判る。
特に工事費が全然無い中で造られた建物とは思えない。確かに仕上げなどは最低限だが、建物から発せられる緊張感は住み手の建物への意識の高さとそれを導いている安藤忠雄の凄さ。そういった事もこの本を読むと見えてくる。
また、他の本ではなかなか出てこない安藤像も出てきて面白い。悩んでいる姿とか結構インテリな事とか。まああれだけの結果を残している人ですから、結構な分野に博識なのは当然と言えば当然ですが。

本の中心は「現場」。それに対して皆が全力で取り組んでいるのがわかる。同じ建築をやる人間としては大変だが、これだけ打ち込めて素晴らしい現場はあこがれる。
でも本当に安藤忠雄の現場の大変さがわかる。現在でも大変だとは言われているけど、この当時は規模も小さかったので比べ物にならないくらい大変だったと思う。

著者はこの本がデビューらしく、元々建築(構造設計)をしていた。(現在も続けている?)
かといって判りづらい専門用語は殆ど無く、どうしても使わなければならない場合も丁寧に説明がついている。恐らく元々建築をやっている人ではなく、一般の人に読んでもらう事を考慮しての事だと思う。その狙い通りかとても読みやすく、一般の人も「物を造る」過程を知るにはとても良いので是非読んで欲しい。題材も安藤忠雄と言うメジャーな建築家の作品を扱った物なので、なんとなく入りやすいと思う。

自分はこの本は出版して1年位の10年近く前に読んでいたのだが、当時の事務所の本だった事、建築的に読みきれていなかった事などがあり、是非自分の下に置いておきたいと思い購入した。やはり良いと思う本は手元に置いておきたい。
また、この本を再読する前に著者の二作目である「磯崎新の「都庁」-戦後日本最大のコンペ-」を読んだのもある。こちらは建築色が強いので、その系統の人の方が読みやすいと思いますがお勧めです。
(初投稿2010.6.10)

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