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充実した人生とお葬式

先日、葬式に参列した。
叔父さんに当たる人なのだが、大人になる程疎遠になり、私の結婚式には参列してもらったものの、ここ10年は疎遠になっていた。
そもそも祖母が亡くなってからは、正月も親戚で集まる風習が全くなくなった。

叔父さんは68歳。脳梗塞だった。
亡くなった場所は住処から600キロ位以上離れた青森県だった。

旅先で友人と会っていた時に急に倒れて、それから二度と目を覚まさなかったのだそうだ。

葬儀中は奥さんと娘さんの鳴き声が会場中に響いていた。
人生80年と言われる中での60代。早すぎる別れである。

叔父さんは結婚こそはしていたが別居していて、祖母の遺した家に一人で住んでいた。
40年以上経つ古い家ではあったが作りは良かったので、手入れをすればまだまだ住めたはずだけど、家の中はゴミだらけで、家屋は相当傷んでいた。夏場はエアコンもかけず、鍵も開けっぱなしの「少し個性的」な暮らしをしていた。その暮らしぶりも彼の疎遠に拍車をかけていたように思う。

そんな叔父さんだったので、
「参列客も少ない、こじんまりとしたお葬式なのだろう」と想像していた。

しかし、会場に行くと、なんと200人を超す参列客が集まっていた。香典の引き換え品はすでに数が足りなくなっているほどだ。

私たちは会場内にも入れず、(母は実の姉なのに)私たちはロビーで音声のみで葬儀に参列することになった。

話を聞くとどうやら叔父さんは高校時代から熱心にテニスを続けていたらしく、社会人になってからも自らサークルを作り、50年以上指導を含め精力的に活動していたようなのだ。インターネットで調べると叔父の名前の下に「会長」という文字が輝いていた。

叔父は親戚付き合いは薄い人だったけれど、テニスを愛し、テニスを愛する仲間を愛し、自分を愛してくれる家族を愛したのだろうとぼんやりと思った。

最後のお別れで棺桶の蓋を閉める時、チラッと叔父の顔が見えたのだが、穏やかな顔をしていた。
好きなものに全振りした人生。
楽しかったのだろうか?充実していたのだろうか?

親戚だったし、深い話をする機会もなかったのだけど。
きっとそうだった、ということにしておく。

ご冥福をお祈りします。


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