時には映画の話を#002「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」

画像1

日本版の予告動画のリンクを貼ろうと思ったんだけど、とにかく「女性」「結婚」がフィーチャーされてて、男の僕が見てもこの映画のテーマはそれだけに絞られていない、むしろもっと普遍的なものだと思ったから、やめた。

商業的成功は映画製作の一つの正解だと思うけど、この売り出し方はちょっと賛同できない。

御託はいいとして、とにかくこの映画は素晴らしかった。

画面の美しさ、カメラワーク、美しいBGM、映画として見ていてずっと気持ちよかった。

取り上げられるテーマも演劇、文学、音楽、美術にそれぞれ打ち込む姉妹の享楽と苦悩、家族愛、隣人愛、無償の愛、性愛、人の善意、一方で衝突も。

時代に翻弄され、貧困や病気に苦しむ人々、またその一方で裕福で何不自由なく暮らす人も。

人生の全要素では?ということは全人類見るべきでは?思いながら鑑賞していた。見終わったら、すぐに人に勧めたいと思いながら。

4姉妹のそれぞれについて書いていると書ききれなくなると思うので、一番感情移入した三女、ベスについて。

他の姉妹にも「天使」と言わしめるその尊い人間性。献身的に貧困家庭に食事を分け与えに通い、抑制的で感情を顕にしないで、繊細。音楽を愛し音楽に愛されて抜群のピアノの腕前を持ち、ミスター・ローレンスから贈られたピアノを奏でる。

この親切で、多くを語らず、音楽で人を楽しませる三女が僕は一番好きだ。利己的に生きておらず、家族を思い、他人を思える人間性に数時間の短い順間に惚れ込んでしまった。

だからこそ、彼女が遺したピアノを、フリードリヒ教授が弾くときはベートーベンの「悲愴」が相応しい。ベスを思うととにかく涙が浮かんでくる。良すぎるのだ。全部いい(語彙力)

あと、これは絶対に監督の意図的なものだと勝手に確信しているのは、雨の演出。とにかく、この映画は雨がふらない。(これがマサチューセッツ・コンコードは雨がふらないっていなら話は別だけど)降るなら、一番いいシーンか、一番悲しいシーンかどっちかだろうと思っていた。そしたらやっぱり、ここぞというところで、雨は降った。

すべてに配慮が行き届いていて、考え抜かれていた。嫌いなキャラクターや嫌いなシーンが一個もなかった。すべてが美しく、全てが愛おしかった。終わってほしくない映画だった。

時代も、性別も、国と地域も問わず、全人類見るべし。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?