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人生が輝くとき ――『コートニー』ジョン・バーニンガム

イギリスでは、犬との共存の歴史は長いそうで、一種のステータスになっているようです。男性はダンディズムを演出するため大型でシュッとした犬を好み、ヨークシャーテリアのようなかわいい犬はあまり好まないとか、逆に女性はそういったかわいい系を好むとか。

また犬は番犬用にも重宝されるとかで、見知らぬ人物が家に入ろうとすると激しく吠えて、ときに噛みつくほどのどうもうさを求められるとか。しかし、そのために郵便配達員が噛まれて被害続出とか。

いえね、私はイギリスに住んだこともないし、ただテレビとかネットとかで見聞きしただけで、ほんとうかどうかは知らないんですけどね。

おはなし

コートニーは犬の名前です。雑種でよぼよぼの老犬です。

子どもたちが犬を飼いたいといいだしたとき、両親の出した条件は血統書付きでちゃんとした犬。

ところが子どもたちが野犬収容所から連れ帰って来たのは、この老犬コートニーでした。両親が望むような、血統書付きでもなく番犬の役にも立ちそうもありません。

しかしこのコートニー、ステータスにも番犬にも役立ちませんが、料理、ヴァイオリンの演奏、曲芸、なんでもござれのスーパードッグだったのです。

ある日、ご主人様の家が火事になります。2階には赤ちゃんが! 黒い煙が2階から噴き出していて、しょうぼうたいはまだ来ません。

そのとき、コートニーが、、、。

人生が輝くとき

私には、この物語を涙なしに読むことができません。

物語の最後では、子どもたちを乗せたボートが沖に流されてしまうという悲劇が起こります。だめかと思ったとき、ボートを何ものかが引き戻すという奇跡が起こります。しかし子どもたちを助けたものがなんであるか、この絵本は語ってはくれません。

私には、それがコートニーだと思えてなりません。しかも、コートニーはすでに死んでいるのだとも。山の端に霞んでみえるコートニーの駆け回る姿が、それを証明してくれているようです。

年老いて、何も役に立ちそうもない者でも、もっとも輝く瞬間がある。それはしばしば死の直前。ろうそくの灯が消える前に明るく輝くように。
そしてその魂はずっとあなたを見守っています。

『コートニー』
ジョン・バーニンガム/作
たにかわしゅんたろう/訳
ほるぷ出版

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