上層と下層の分断

「組織票」、で説明がつくらしいけど。
それって民主的かな?公平かな?、と疑問が残る。

総裁選の話だ。
直前の調査では高市早苗候補の人気が、8割5分と圧倒的だった。しかしこの人気がそのまま得票に繋がるとは限らないという。

投票率が10割に近付けばほぼ同じくらいの結果も望めようが、実際の投票率は他の選挙と同程度。つまり5割に満たない。党員でもそうなのだ。
投票率が低いと、全体的な人気よりも、組織票が強い候補が有利だから、その時は高市候補は不利なのだ、…という事前の話だったが、事実、その通りになった。

票には、「浮動票」等と呼ばれる成分と、「組織票」と呼ばれる成分とがある。
前者は、有権者個々の独立した意思で投票される票、何処へどれだけ流れるか予想がつきにくいから、「浮動票」。選挙の票読みでよく使われる用語だ。

対して「組織票」とは、各種団体である程度まとまった数の票が、事前に何処へ行くか約束されているものを指す。確定的な人気票、ということではなく。その団体の意思として、例えば何か話題になっている法案を通して欲しいとか、逆に通して欲しくない、廃案にして欲しいとか。そういう条件と引き換えに、特定の候補の選挙にその団体が協力する、という取引がしばしばあるという。
或いはもう少し違って、俺達はどの候補を推すべきだろうか、とその団体内部での議論が事前にされて、議論の結果、その団体に属する有権者の票が特定の候補に供されるという場合もある。決定に違反する投票行動をした団体メンバには、団体内での見えないペナルティがあるかもな。

さて、下馬評では圧倒的人気の高市早苗候補と、対称的に人気の奮わなかった石破茂候補の得票数が拮抗し、決選投票では石破候補が勝ってしまった。

事前の調査で判明していた民意が、最終的な結果に反映されていない。その原因は1つに絞れないかも知れないが、いわゆる「組織票」に依る所が大きいとすれば。
余りに乖離が大き過ぎないか。これって、「民主的」と言えるのだろうか。

議院内閣制は、「代表民主主義」ともいう。
「民主主義」とは、(「権力者」とかの反語として)「国民」や「県民」「市民」「町民」を国政や地方行政の「主」と定めるもの。ただしバラバラのまま纏まりがないと都合が悪いので、選挙で民意の代表者を何人か議会に送り出し、民意を託す。議員には、議会で民意を代表して行動してもらう。それが筋。

決選投票に投票するのは自民党の国会議員だ。
だから党員の有する民意を、議員が代行して示す義務があるんじゃないのか。

議員と議会と行政を上層、それらの裾野としての有権者を下層とすると、上層と下層とを結び付けるハシゴやパイプ、リンクといったものがどうも、細くなってほぼ絶たれている、上層は下層と関係なく独自の論理で動いている、そんな気がしてならない。

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