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マルエフ

スーパーで新発売の麦酒を購入。その晩コロッケをつまみに飲んでみた。舌に苦みが残る昔の麦酒の味だ。と思ったら缶に1986年の復刻版とある。「何を食べさせても同じ」「違いが分からない」と顰蹙を買いがちな私の鈍舌(どんたん)も捨てた物ではない。しかし、その頃の私はファンタこそ至高の飲み物と信じて疑わない男子小学生だったはずだ。なぜ麦酒の味を知っているのだろう。

団地のダイニングで父が野球を見ている。食卓に瓶ビールが載っている。近所の酒屋がケースで持ってくるのだ。その晩も巨人は圧倒的に強くスワローズは戦意喪失し父は眠気を催していた。瓶にはまだ液体が残っている。父は私に瓶に栓をして冷蔵庫に仕舞うよう命じた。(当時瓶ビール用の栓が市販されていた)。私は親の目を盗んで麦酒を口に含んだ。

ゲロまずい。

マルエフはよく売れているという。その苦みはノスタルジーを呼び起こし、味以上の何かを皆に想起させるのであろう。