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島崎専務のdistance

定時だ。

即座にパソコンの電源を切り、席を立つ。長年帰宅部で研鑽を積んできた成果だ。そわそわしながら下りのエレベーターを待つ。チャイムが鳴り、ドアが開く。すると、今日も島崎専務がいた。

島崎専務はかなり偉い人だ。専務のスピーチを何度か遠目に見たことがある。当然、私のような末端の社員のことなど知る由もないだろう。他社の人間だ、と思っているかも知れない。

4,5人がエレベーターに乗っていた。噂によると専務はかなりせっかちらしい。だからすぐ降りれるようにドアの横に立っているのか。でも、そこに立つなら開閉ボタンを押してほしい。なぜ開閉ボタンを押してくれないのか。横柄な人だ、と思った。いや、もしかしたらこれは気遣いかも知れない。謙虚なのは良い事だが、それなりに偉い人にはそれなりに威張ってもらわないと周りが困る。

そんなことを考えていたら一階に着いた。専務は誰よりも早くエレベーターを降り、雑踏に消えていった。