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勘三郎さんの分身「ミッキー」②ミッキー、NYへ。

勘三郎さんの分身「ミッキー」②ミッキー、NYへ。
~勘三郎さんへ届けたミッキー達の記録、その2。


★最初の記事はこちら:
勘三郎さんの分身「ミッキー」①黒足袋の十郎

今回は2004年7月、平成中村座の初めての海外公演、NYはリンカーンフェスティバルの「夏祭浪花鑑」に合わせて作ったミッキー&フレンズをご紹介します。
前回の白酒売を喜んでもらえたので調子に乗ってすぐ作ったやつです。同じ6月歌舞伎座の千穐楽にお渡ししたので、製作期間は2週間くらいでした。


さすがに海外公演までは時間的にも経済的にもさすがに行けなかったので、せめてミッキーに見届けてきてもらおう!と思い立ってぬいぐるみを探しにいったら、こんな5体セットに出会いました。確か、ディズニーストア。
6月だったので梅雨の時期で、レインコート着てますね。


夏祭に出てくる主要登場人物5人が、ちょうど、マッチするんですよ。

ミッキー=団七=勘三郎さん
ミニー=お梶=扇雀さん
ドナルド=徳兵衛=芝翫(当時:橋之助)さん
デイジー=お辰=福助さん
グーフィー=三婦=彌十郎さん

ね? なんか合うでしょ?
こんな風に狙ったとおりのぬいぐるみに出逢えるとイメージが膨らんで、作業は一気に進みます。

ちなみに今度の5月のコクーンの配役だと、勘九郎さん、松也さん、七之助さん…それぞれちょっと違う気がする(ちなみに一度も作れなかったけど、私の中では勘九郎さん、七之助さんはチップ&デールのイメージです)。
タイミングってのは大事だな、と思います。

では製作風景をば。
まずは全員、裸にむいちゃいました(笑)
小物も全部取っ払う。

男性陣は褌から作りました。煙草入れも作ってます。
眉間の傷は後半の団七にしかありませんが、つけてみた。傷や煙草入れはフェルトです。鎖は本物のアクセサリー用のチェーン。たいていのものはユザワヤで揃う。
褌は無地のコットン。越中褌にしてあります(本当はどうなんだろう?)。

雪駄は夏祭においてとても重要なアイテムなので履かせたかった。
厚紙と畳地を重ねて張り付けて、布テープでぐるりと止めてます。この雪駄のおかげで自立するようになったんじゃなかったかな。


徳兵衛の場合は白ふんどしにしてますが、生地は木綿ではなくサテン系のちょっといいものにしてますね。尻がでかいので苦労したあまり、出来上がりが嬉しくてバックショットを撮ってたみたいです。

橋之助さんが劇中、晒を巻いていたのでそんな感じにしてある。ボディが小さすぎて苦労しました。


続いて女性陣、まずはお辰。
絽の着物が印象的な役ですが、これは本物の絽の反物の端切れを使っています。ユザワヤで死ぬほど探しました。
カットしてもらって買うとめっちゃ高いんですよ、和物って!

水玉のリボンははずして、黒のフェルトでリボンを作り直しました。かんざしはさすがに作れなくて、人間用の髪留めです。白足袋も履かせてます。

前回も書きましたが、着物の型紙は乳児用の浴衣の型紙を応用してます。着物ってほぼ直線なので作りやすい。

帯の結び方に工夫がなくて不格好だなあ(反省)。
このあと慣れて作ったものは帯ももう少しうまく作れてます。


お梶。同様にフェルトのリボンと人間用の髪留めです。
こちらは木綿の反物のハギレ。さすがにまったく劇中と同じものは見つからないので何となくイメージに合うものを選んでました。
ちなみにお辰とお梶はちゃんと襦袢も着せてます(襟元の白がそう)。


こんな感じでこまごま作ってたら、勘三郎さんにお渡しするタイミングまでに全部作り上げられなくて(苦笑)、三婦だけ後日、番頭さんに預けてニューヨークに連れて行ってもらいました。はっはっは。

その分、時間をかけられたので実はこのグーフィー、お気に入りです。
雲竜のイメージで、雲模様の木綿生地。足は緑だけど色足袋っぽかったのでそのまんまにしました。耳元の数珠はリアルに人間用の数珠です。ちょうどよかったんですよ。

耳のとこに縫い留めておきました。


団七と徳兵衛はこれしかないでしょう!の三婦内での色違いの揃いの格子の浴衣風です。
このサイズの生地で和物はさすがにないので、これはアメリカンコットン。ギンガムチェックです。
アメリカンコットンはこのあともよく使いました。割と和のイメージに合うものも多いので重宝しました。


この時から最後のミッキーまで、一貫してこだわってたことがひとつだけあって、それが「脱がせられること」でした。

どこまでもミッキー達は役を演じてるんだ、という体でした。縫い付けたり、適当に布を重ね合わせて服に見せかけたりするのではなく、衣装をきちんと着せたかったんです。

これが高じて、一体のミッキーに3着の衣装を添えてプレゼントしたことが有るんですが、その話はまたいずれ(笑)

団七は「夏」、徳兵衛が「祭」、お梶が「浪」、お辰が「花」、三婦が「鑑」の文字の団扇を持っていて全員揃うとと「夏祭浪花鑑」になる趣向でしたが、揃ったところの写真を時間切れで撮れなかったのが悔やまれます。


勘三郎さんの感想は直接は聴けなかったのですが、ちゃんとニューヨーク行きのボテには入れてくれたらしく、公演中の楽屋前にこのミッキーがちまっと映っているのをニュースかなにかの映像で見て嬉しかったのを覚えています。

気にかかるのは、NYにあとから旅立った、プルート三婦は無事にたどり着いたのか、ということ。
聴けるものでもないまま、17年も過ぎてしまった。無事にたどり着けたと信じておこうと思います。


次回は二組のカップル、「仇ゆめ」の狸と深雪太夫、「鰯売」の猿源氏と蛍火をご紹介します。

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