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【聞いてみた】キャリア30年現役CAに聞く危機管理のポイント4選

2024年は人物インタビューだけではなく、自分が興味を持ってそう&社会的にも興味が高そうなテーマをちょっとピックアップしてインタビューしようかなと。
まあーあいかわらず名前はまだ決まってないんですが。
名前なくても、企画インタビューでよいか。

と、いうことでさっそく今回は、お知り合いのCAさんに、今年のお正月に起きた飛行機事故についてお話を伺ってみました。(無名人インタビューのおかげで気になったことについて、お話お伺いできる方が爆増しましたありがとうございますみなさまのお陰です!ありがとうございます!)

飛行機事故

まずは、事件の概略はこんな感じでした。

2日午後6時前、東京 大田区の羽田空港で、新千歳空港から向かっていた日本航空516便が、着陸した直後に海上保安庁の航空機と衝突しました。
この事故で海上保安庁の機体に乗っていた6人のうち、5人の死亡が確認されたほか、日本航空516便の乗員・乗客のうち14人がけがをしていることが確認されたということです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240102/k10014307191000.html#anchor-04

お正月の日本を驚かせたニュースでしたね。
ただ同時に、軽傷はあるとはいえ400名近い乗客が全員無事に脱出できたことも話題になりました。

日本航空によりますと、516便には子ども8人を含む乗客367人、乗員12人の合わせて379人が搭乗していましたが、全員、機体から脱出したとしています。
東京消防庁によりますと、日本航空516便の乗員・乗客のうち14人がけがをしたということです。
このうち、10歳未満から30代までの男女4人が救急搬送され、このうち2人は煙を吸い込んで手当てを受けていますが、命に別状はなく、残りの2人もけがの程度は軽いということです。このほかの10人のけがの程度は軽いとみられ、それぞれ自力で医療機関に向かうということです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240102/k10014307191000.html#anchor-04

私qbc、この脱出はシンプルにすごいなと思ったんですよね。
どうしてできたんだろう、って。なので聞いてみました!

キャリア30年のCAに聞いてみた

qbc:おはようございます。

知花。:おはようございます。

qbc:今日はお忙しいところありがとうございます。まず、今回のニュースで最初に感じたことはなんだったか、というのを軽く聞いてみたいです。

知花。:やっぱりショッキングでした。ここは一般の方と同じ意見だと思います。
もし私があの場にいたら、とかもいろいろ思ったりもしましたけど。

qbc:同業者の方ですものね。

知花。:ええ。立派だったと思います。

qbc:ではさっそく、最初は客室乗務員としての経験を教えてください。

知花。:はい。

ということで! 知花。さんの職務経歴はこんな感じ!

・入社
 ・契約社員として採用され、1年ごとの契約更新。
 ・初期の給与は乗務時間に連動していて、月10万円を切っていたこともあった。
 ・渡航先で会食したり、華やかな面もあったが、お金がなくて厳しい時代。
・正社員
 ・数年で正社員になり、パーサー(主任乗務員)も勤めるようになる。
 ・入社時は国際線のみだったが、国内線と国際線の両方に乗務するようになる。
 ・海外の航空会社に出向して、多様な接客サービス、教育を学ぶ。
 ・海外のクルーとの交流を経験し、その経験を自社に持ち帰る。
 ・結婚と育児、仕事の両立
 ・結婚離婚再婚出産を経験。育児休暇を取得し、子育てと仕事の両立を図る。
 ・仕事をしながら子育てした経験を、社内のプロジェクトチームに提供。
 ・クオリティリーダーとしてチームを率いる。

ざっくりまとめてしまいましたが、海外の航空会社で、会社によっては水泳の25mのタイムを計ったりなど、同じ航空業界でもさまざまな訓練があるなど、いろいろな経験をされておりました。
これはこれで、またじっくり聞いてみたいですね。

ちなみにブログはこちら!

それでは本題の危機管理のポイントについてお伺いしていきましょう。

【ポイント1】やっぱり訓練は大事

qbc:経歴のお話ありがとうございました。
次に事故についてお話をお伺いしていくんですけれども。事故の報道を受けて、一般の人と同様にショックだったとのことですが、職業目線で言うと、どんなことを感じましたか?

知花。:報道を見ている限り、エマージェンシー訓練のまんまだと思いましたね。

qbc:なるほど。

知花。:火災が外で発生して、機内に煙が蔓延する。社内のPAが壊れる、アナウンスの機器のことですけど、それが壊れてしまう。
そうすると、もう機長とCAとの連絡が取れなくなってしまいます。
通常だったら、CAから客室の情報を伝えて、それをもとにキャプテンが判断して、その指示を待ってCAは動くんですね。

qbc:なるほどなるほど。あくまで意思決定はキャプテンにあると。

知花。:はい。でも、状況によっては、キャプテンが亡くなっているかもしれない可能性もありますし、そうなると、あらかじめ決められた判断基準に則って、CPがリーダーシップを取り、CAチームがそれぞれ判断して どういう行動を取るかを決定します。

qbc:ちなみに、エマージェンシー訓練は、どれくらいの頻度で行うんですか?

知花。:年に1回ですね。2日間にわけて行います。だから、私の目から見ると、訓練してきたことを、訓練通りに出来たのは素晴らしい!と思いました。
訓練してきたことを訓練通りに行動化するのは難しいことです。それはともかくとして、訓練内容自体に間違いはないし、真剣に緊張感を持って徹底的に取り組むべき価値のあるものなんだなと思いました。

qbc:想定済みの内容ではあったんですね。すご。訓練は大事ですね。

知花。:大事です。訓練は大事。それとイメージトレーニングもとても大事です。イメージトレーニングしておくと、身体がスムースに動きますよ。

【ポイント2】最優先は自分、そして全員のパニックコントロール

qbc:こういう事故が発生した際の、CAとしての最優先事項ってなんなのでしょうか?

知花。:まずは、CA自身がケガをしないように、自分の安全を確保することを最優先で行います。CAがケガしてしまうと、乗客全員の脱出の誘導ができなくなりますから。まず自分を安全な状態にします。

qbc:なるほど。・

知花。:次にパニックコントロールですね。
お客様が混乱しないように、声かけ、エールをします。「私たちは緊急事態に備えて訓練してます!大丈夫だから落ち着いてください」といった内容ですね。

パニックの度合いにもいろいろあって、お客様が叫んでしまうようなパニックもありますし、それから逆に落ち着きすぎて行動がゆっくりになってしまうような状況もあります。
特に飛行機の機体自体は燃えにくい素材でできているので、パニックの原因になるような、機内で炎上するといったことは起きにくいんです。
そういった分かりやすい事故だけでなく、煙などの危険もありますから、正確な情報を掴んだ上で、適切なパニックコントロールを行っていきます。

qbc:あ、機内はぱっと見安全そうだけど、実は危険、という状況がありうるんですね。
それはそうですよね、そもそも飛行機自体がもう空の中を飛んでいるわけで、外の環境は一般人の感覚ではつかみづらいですもんね。なるほど。

知花。:そうですね。煙が出ていれば、姿勢を低く伏せて鼻と口を覆うように声掛けします。その他、車いすの方、眼が見えない方で脱出に困難がある方がいれば、座席の把握や近くの援助者の選出をします。

【ポイント3】正確な情報とチームワーク

qbc:事故発生時に大切なことは、どんなことでしょう?

知花。:やっぱり正しい情報をみんなで共有することが大事ですね。
現場にいる人、例えば火災が機内で発生した場合、第1発見者がどれだけその状況を把握して的確に伝えられるかが、ものすごくポイントになります。CPがその現場にいるとは限らないですし。実際に、そういう訓練をエマージェンシー訓練の中でしていますね。

qbc:あーそういうことも、もう訓練でシミュレート済みなんですね。

知花。:そうですね。それから、何かが起きるとみんなその現場に行ってしまいがちになります。状況確認したくなるんですよ。でもお客様はキャビン全体にいるわけで、お客様全体をおろそかにするわけにはいかない。
だからきちんと状況把握できる人が現場を確認して、発信者の役割をしていくというチームワークができるように、訓練しています。

qbc:具体的には、どういうことをするんですかね。

知花。:お客さんがすいませんって声をかけてくれたとしたら、CAとお客さん、2人でとか、他のCAと一緒に行くとか、1人でその状況を抱えこむようなことにはしないですね。
想像ではなく、まず事実を正確に把握するように訓練しています。火災であれば、火元はどこなのか、何が燃えて火災が起きているかを確認します。

qbc:思いこみで行動しないってことですね。

知花。:そうですそうです。それと、火災かもしれないと仮説を立てたら、確認しにいく時は、お水だったり毛布だったり、何かしら準備して現場に行くことが多いですね。何かするときには、ついでに他に何か出来ることないかっていうことを、考えていることが多いですね。

【ポイント4】判断力

qbc:今回の事件について、同じCAとして一番注目したところは、どのあたりでしょう?

知花。:脱出のセオリーでいうと、飛行機は全乗客が90秒以内に脱出できるようにできてるんですね。でも、それは全部のドアが開いたら、の場合であって。今回の事故は18分かかっていますが、開けられない扉がいくつもあると、それだけ時間は余計にかかります。

今回、ドアが3つ開いたって聞いたときに、私は、前方の右左のドアと、後方のドアの右側が開いたんだろうって思ったんですよ。ドアは8箇所あるんですけど。

でも実際見たら、前の2つと一番後ろの左側の扉が開いていた。完全に私の推測ですけど、多分、この後ろの扉っていうのは、本当は開けちゃいけなかったと思うんですよね。私が多分その場にいたら、開けないという判断をしていたと思います。

飛行機が着陸するときに、多分前脚破損してるんで、脱出用のスライドが地面に接地しない可能性があったんじゃないかと。スライドから滑り降りた後、人が放り出されてしまうリスクがあったんじゃないかと。
なので、後ろの扉は開けないっていう判断するCAの方が多いんじゃないかなと。
(※あくまで推測のお話です。同じ仕事をする者として、こういったシミュレーションを頭の中で行うものだとお考えください)

qbc:なるほど。

知花。:機長の指示がなかったとすると、それぞれの扉を担当してるCAが、ここを開けてもいいかどうかっていう判断をして、開けたと思うんですよね。
でも、結果後ろの扉が開かなかったら、全員は助からなかったかもしれないっていうふうに思ってますね。ここの判断は、凄いし、現場の判断が尊重されるべきだと思っています。

日常に役立てている危機管理能力

qbc:こういった危機管理の力は、日常でも活かされているんでしょうかね?

知花。:日常で、ですか?
そうですね。多分、準備とかすごい上手いと思いますね。自分で言うのもあれですけど。笑
何かしていたら、次のことだけじゃなくて、三つ四つ五つ先を考えて準備しています。それは多分CAっぽいかもって、自分で思いますね。もちろん、旅行の準備も早いです。

qbc:旅行の準備! それはそうですよね。

知花。:他にも、収納も上手いほうだと思います。限られたスペースで使いやすく収納する。料理もそうですね。後工程を考えて先に準備するものを考える。段取り慣れしているので。

qbc:なるほどなるほど。

知花。:あとは、救命処置ですね。なんていうのかな、街中で人が倒れちゃってるとか、そういう時に、自信を持って「大丈夫ですか」って助けに行ける。訓練を受けてなかったら、ちょっとためらってしまう人が多いんじゃないかと思うんですよ。

qbc:善きサマリア人法あっても、ちょっと身構えますね。

知花。:そうですよね。今回の事件のCAの活躍は、私自身、エマージェンシー訓練の重要さを証明してくれる出来事でした。より一層、訓練に身が入りますね。
大きい航空機事故の場合、その年の訓練で、ディスカッションの対象になるんですね。そこでまた、より詳細に振り返ることになると思います。

qbc:振り返りも大事ですね。

知花。:大事です。訓練も振り返りも みんなでディスカッションすることも大事です。

qbc:本日はありがとうございました。

知花。:こちらこそ。ありがとうございました。

今回お話をお伺いしたのは「空飛ぶ占術家 橘 知花。」さんです!
知花。さんご本人をもっと知りたい方は、こちらをご覧くださいませ!

まとめ

いかがだったでしょうか。
いかがだったでしょうかというか、むしろインタビューすると自然に勉強になってしまうことに気づきながらインタビューしてしました ありがとうございます。
これを記事にするにはこの順番で聞いていくとよいだろうな、なるほどこういう意味構造の情報なのであれば、この質問を先にしておくか、みたいなことをしていると、自然と、情報が整理されちまって、頭の中で整理しやすくなって頭の中にやすやすとすいすい収納されていってしまうんですね。良かった。

訓練することが大事だ、そして振り返りも大事だ。予習復習大切だよ、と義務教育的言説がアドバイスとして浮かび上がってきたわけですが。そうですね。私としては、かもしれない、という想像力があってこそ、この予習復習しなきゃいかん、というパワーが生み出されるのかな、と思ったりしました。

このインタビュー、楽しいね。ありがとうございました!!!!!

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

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