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「アイデアが出ない人」が知らない5ステップ

ビジネスで成功するためには「ゼロからイチを生み出す力が必要」といわれます。

編集者の資質としても問われることの多かった「0→1思考」ですが、多メディア時代の今、何も形のないところからアイデアを生み出し、新しい価値や概念を創造して世の中に送り出すことは、編集者以外にも求められているスキル。

では、どうすれば「ゼロからイチ」を生み出せるのでしょうか? 一例をご紹介します。

「かけ合わせ」が新しい価値を生む

単刀直入にいえば、本当の意味での「0→1」ができる人はほとんどいません。できるのはスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクなどの天才級の人だけで、まだ世の中に存在しない新しいモノやサービスを提供するのはほぼ神ワザに近いこと。そのくらい難しいことでしょう。

天才級の「0→1」の人がほぼいないなら、僕も含め、残りの大多数の人はどんなアプローチをしていくことができるのか。その答えのヒントは「かけ合わせ」にあるのではないかと思っています。

何かと何かをかけ合わせることで、今までにない強みが生まれ、新しい価値が生まれる。そうやってカタチにしていくことで、これまでも僕なりの「0→1」を積み重ねてきました。

たとえば、「税理士の本を出す」という話があった時、その本の企画の立て方に編集思考は問われます。

「税理士は税金のプロ。だから、節税の本を出そう」では直球すぎるでしょう。自分がもっと能動的につくりたくなる本にするために、まずは著者の話をじっくり聞いて、「かけ合わせ」ができる要素を探るところからはじめます。

その税理士は、料理学校に通った経験があり、料理の腕もプロ顔負けだったとします。すると、「お金のプロ」×「料理上手」というかけ合わせができ、『節約料理のレシピ本』を考えられるかもしれません。

さらに著者の話を聞いてみたところ、今の体重は60㎏だけれど、かつては100㎏を超えていたことがわかったとします。料理学校に通ったのは、ダイエットをするために自炊をしようと考えたからだったのです。

すると、「お金のプロ」×「料理上手」×「ダイエットの知識と実績アリ」ということで、『3ヵ月で10㎏痩せて50万円貯まる本』を思いつくかもしれません。

かけ合わせ方にも技術がありますが、こんなふうにひとつの面からだけでなく、いろいろな角度から眺めることで気づく「かけ合わせ」によって、新しいコンテンツを誕生させること──これが、僕が考える自分なりの「0→1」の形なのです。

60分で読めるけれど一生あなたを離さない本

これまで僕自身、「かけ合わせ」によって多くの本を編集してきたわけですが、自分のやり方が間違っていなかったという自信を深めてくれた1冊の本がありました。

アメリカの広告代理店協会の会長などを務めたジェームス・ウェブ・ヤング氏による『アイデアのつくり方』です。

マスコミ業界の人なら一度は読んだであろう本書には「アイデアが生まれる原理」と題して、「アイデアとは既存の要素の組み合わせである」と書かれています。

また、「アイデアを生み出す5段階(収集→咀嚼→孵化→誕生→展開)についてもまとめられていますので、簡単にご紹介します。

第1段階:収集
──情報を集める段階

まず、関連する資料(情報)を集める。資料には、商品やサービスに関する「特殊資料」と、世間に存在する一般的な情報である「一般資料」の2つがあり、これらをかけ合わせてアイデアを練る。
第2段階:咀嚼
──資料を咀嚼し心の中で消化する段階

集めた資料を足したり、引いたり、組み合わせたり、さらには見方を変えたりして、自分なりに咀嚼し、消化していく。無関係に思える情報群の中から共通項を見つけ、アイデアを組み立てていく。
第3段階:孵化
──一旦、考えることを手放して寝かせる段階

第1段階と第2段階での素材を寝かして熟成させる。一旦考えることをやめ、別のことに取り組む。散歩に出かけたり、音楽を聞いたりして、無意識が自動的につなぎ合わせるのを待つ。
第4段階:誕生
──閃いた! という感覚が湧き上がる段階

何かと何かがかけ合わされて、突然「わかった!」「閃いた!」という無意識中で情報がつながる瞬間を待つ。この「閃き」の段階に進むためには第2段階でいかに考え抜いたかが重要。
第5段階:展開
──アイデアを具体化する段階

生まれたアイデアが実現可能なものか、検証していく。良さそうなアイデアなら、もっと良いものになるように仮説・検証を繰り返し、最適解を求めて考える。

というように、この5段階を踏めば、天才でなくても誰にでも「0→1」をつくり出すことが可能なのです。

企業が求めはじめた「編集思考」

編集思考が身についていて自分なりの「0→1」のつくり方を知っていれば、僕らのアンノーンブックスという会社は、本づくりだけにこだわり続けなくてもいいんじゃないかとも考えていて、すでにそのような動きも増えています。

数年前、雑誌『POPEYE』の元編集長が、ユニクロを運営するファーストリテイリングの執行役員になったことがニュースになりました。

これについて、柳井正社長は『Forbes』のインタビューで、「編集者の視点で、ユニクロの服やブランドに磨きをかけてほしい。何かをつくることは、何を選んで何を捨てるかと決める『編集』みたいなもの」と語っています。

SNSが一般化したことで、すべての人がメディアになれるようになった今、企業や個人の成功、すなわちヒト・モノ・サービスが「売れる」までの地図を多角的に描く「編集思考」が、これからますます必要とされていくはず。

僕らの考えるアンノーンブックスも、本づくりだけにしばられることなく、より一層「コンテンツづくりのプロ」としてポジショニングしていくことになりそうです。

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