【小説】弥勒奇譚 第十七話
「これをお前が一人で彫ったのか」
しばらく後に続く言葉が出なかった。
長い沈黙のあと不空は大きく息をつくとようやく口を開いた。
「おまえにこれ程の腕があろうとは思ってもいなかった。今ここまで彫れるのは私のところには居ないだろう。私でも出来るかどうか」
不空は振り返って弥勒の顔を見た。
「これも夢のおかげだと言うのか」
「やはり私の力だけではここまでは出来なかったと思います。夢に導かれて来たと言うのが実感です」
「そう謙遜するな。夢の助けがあったとしても
おまえの腕で彫ったのだ