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【小説】弥勒奇譚

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京の仏師弥勒は夢に導かれて一世一代の造仏に挑む。
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#オリジナル連載小説

【小説】弥勒奇譚 第一話(全三十話)

「またあの夢だ」 弥勒は同じ夢を繰り返し見るようになり、ここ数年は三日と開けず頻繁に見る…

【小説】弥勒奇譚 第六話

翌日も早くから朝市の呼び声で大賑わいの街を抜け、少し奥まった大御輪寺まで来ると人もまばら…

【小説】弥勒奇譚 第十話

その夜久しぶりに夢を見た。 さらに続きがあり少女が弥勒に語りかけるのだった。 口元は喋って…

【小説】弥勒奇譚 第十一話

ある日気分を変えようと里の衆に聞いた少し山を上った所にある古い社の跡へ行ってみた。 かな…

【小説】弥勒奇譚 第十三話

次に衣の彫だが弥勒は衣文の彫りがあまり得意ではなかった。 全躯の調和を取るのが苦手なので…

【小説】弥勒奇譚 第十六話

この作業も終わろうとしていたある日龍穴社より使いが来た。 客人が来ているので下りてきても…

【小説】弥勒奇譚 第十七話

「これをお前が一人で彫ったのか」 しばらく後に続く言葉が出なかった。 長い沈黙のあと不空は大きく息をつくとようやく口を開いた。 「おまえにこれ程の腕があろうとは思ってもいなかった。今ここまで彫れるのは私のところには居ないだろう。私でも出来るかどうか」 不空は振り返って弥勒の顔を見た。 「これも夢のおかげだと言うのか」 「やはり私の力だけではここまでは出来なかったと思います。夢に導かれて来たと言うのが実感です」 「そう謙遜するな。夢の助けがあったとしても おまえの腕で彫ったのだ

【小説】弥勒奇譚 第十八話

弥勒はその夜久しぶりにあの夢を見た。 場所は龍穴社のようだが見慣れない建物から普賢が出て…

【小説】弥勒奇譚 第十九話

「色付けはやったことがあるのか」 「はい、像本躯にしたことはありませんが修理の手伝いで台…

【小説】弥勒奇譚 第二十話

仕事場に戻った弥勒はすぐにでも彩色に取り掛かりたかったがなかなか筆を手に取ることが出来な…

【小説】弥勒奇譚 第二十一話

弥勒は挨拶もそこそこに室生寺を後にして自分の 作業場に戻ると、木端を使って今見てきた色付…

【小説】弥勒奇譚 第二十二話

本地仏は寺の仏像と違い一度厨子に納められると よほどのことが無い限り厨子の扉が開かれるこ…

【小説】弥勒奇譚 第二十三話

数日後、ようやく厨子も完成し薬師如来像は再び里人の手で社務所から出て厨子に安置された。 …

【小説】弥勒奇譚 第二十四話

開眼供養も数日後に迫り準備もほぼ終わろうとしていたある日、龍穴社を一人の男が訪ねてきた。 弥勒と不動が社務所の前で立ち話をしていると旅人らしき格好のその男はきまり悪そうに頭を下げながら近づいてきた。 「不動殿お久しゅうございます」 不動はしばらく男の顔をぼんやりと見ていたが急に 顔色が変わった。 「そなたは文殊、文殊ではないか」 「五年まえに無断で出奔いたしました文殊でございます。 誠に申し訳ありませんでした」不動は弥勒の顔を見たり文殊の顔をみたりしながらも、おろおろするばか