【小説】弥勒奇譚 第二十二話
本地仏は寺の仏像と違い一度厨子に納められると
よほどのことが無い限り厨子の扉が開かれることは無い。
開眼供養の後はおそらく再び見ることは無いのだろう。
そう思うと完成した喜びとは裏腹に寂寥感にも似た感慨がこみ上げてくるのだった。
「弥勒殿疲れた顔をされておるの。御用ですかな」
背後で相変わらず元気な不動の声がした。
「これは失礼しました。薬師如来が完成しましたのでこれからの事を相談に参りました」
「それはめでたい。厨子もあのように数日後には完成しよう。
開眼供養の日取りはお伺