【小説】弥勒奇譚 第十三話
次に衣の彫だが弥勒は衣文の彫りがあまり得意ではなかった。
全躯の調和を取るのが苦手なのである。少し彫っては像から離れて全躯を見る、少し彫っては全躯を見るの繰り返しでいつもの何倍もの時間と手間を掛けて衣文を彫りあげた。
お顔の彫りに取り掛かろうとするのだが最初の一手を入れるのに逡巡する日が続いた。仕方なく気分を変えようと頭髪を先にすることにした。
螺髪は掘り出さずに全て別に彫って頭に貼り付けようと考えていたので一つ一つ丁寧に作って行く。
細かい作業で意外に手間取り百八個すべてを