詩の日誌「抽斗の貝殻のように」8
「ゆきの夜。はなの家」
春の日に生まれる子が初めて目にするものはなんだろう。その子をおくるみで包む人は、もし頰にふれたなら日差しがふわりと香る、咲いたばかりの花のいろであってほしい、と願うだろうか。
どんなに降りつもっても、遠い笑い声のように甘やかな。
ある年の三月の終わり。予定日よりも二か月も早くわたしが生まれた夜。暖かな山のふもとの春にしてはめずらしく、吹ぶきと呼べるくらいの雪が降っていたそうだ。
生まれてすぐに両親と離れて過ごしたそのふた月のあいだに、わた