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今日一番のありがとう

在宅勤務を終え、懇親会へ向かう。
自宅最寄り駅へ着くとちょうど当駅終点、折り返し始発の電車が入線。
降車の人が捌けたのを見計らい、車両に入る。
誰もいないシートに一番乗り。

ふと向かいの席には座ったままの二人。
終点に気づかずに乗ったままの人はちょくちょく見かけるがそれでもしばらくすると、大抵ガラガラの車両やアナウンスに気づき自発的に降りていく。

だが今日は違った。
目の前の二人はどう見ても白い肌、金髪、碧眼の外国の人。

一瞬迷いののち、エイヤーと声をかける。

エクスキューズミー
声かけたら気づいてくれた。

ここは終点って何ていうんだっけ。
ああ、でもお伝えしないとせっかくここまで乗ってきたのに、戻ってしまうよ。
ああ〜もう思った通り言っちゃお。
ポンコツ英語でもなんとか伝わるかも。

デイスステーションイズターミナル。
ウエアユーゴーイング?

「エックスジートウエニーシックス」

へ?駅名じゃなくてコード番号で答えられちゃったよ。
どこ?その番号?

社内の電子掲示を見ても既に切替わった表示にはこの駅の番号から終点までの分しか出ていない。
それでもキョロキョロしている間に二人は降りてくれた。

とりあえず降りてもらうことには成功。

ホームへ出た二人。
立ち止まって、スマホを見ている。
だいたい次に来る電車に乗れば着くだろうけど、それもちょっと無責任。
こころが痛む。
それにしてもあの番号の駅はなんだっけと頭の中で辿る。
英語の番号と駅の数から・・・。
うん多分あの駅だ。間違いない。

幸い始発まではまだ時間があったので、ホームの二人のところへ向かう。
おせっかい発動中。

アーユーゴーイントゥ〇〇?

一人がスマホをわたしに見せる。
老眼と疲れ目でよく見えないが、大丈夫。
うなずいて見せる。

目を見ながら今度の電車に乗れば大丈夫よ。
わたしが保証する。
くらいの気持ちを込めて言う。

ネクストトレインウイルビーオーライト。
ユーキャンゴー〇〇

二人の顔がパーっと明るくなって、からだが移動モードになるのがわかる。

「サンキュー。アリガト」
なんか本当に喜んでもらえたみたい。
今日一番の嬉しいありがとう、いただきました。

電車に戻るわたし。
座席から彼らが乗車口の列に並ぶのが見える。

しばらくしてわたしの乗る電車のドアは閉まり、出発。
次の駅に向かう間に反対方向へ進む電車とすれ違う。
彼らが乗る電車。
もうすぐそこに着くよ、と心の中で声をかけた。


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