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白いバスケットシューズ

中学一年生の時、友達に誘われて入部したバスケ部だったが、運動音痴のわたしは練習に全くついていけず、一週間後には退部を申し出た。
残念がった友達は、マネージャーとして残ることを勧めてくれ、女子バスケのマネージャーとなった。

あの頃流行っていたコンバースのバッシュ。
母子家庭三人きょうだいの一番年上長女のわたしには、とても手に入るような価格ではなく、よく似た形のノーブランドのハイカットで、部活に参加した。

コンバースが買えないのはちょっと寂しかったけど。

時は過ぎ、高校・大学・社会人となってすっかり忘れていたシューズだった。

先日それまで履いていたスニーカーがへたれてきたので、靴屋の棚を眺めていたら、コンバースのバスケットシューズが変わらぬ形で陳列してあった。


それを見た瞬間、忘れていた記憶や感情が蘇った。
そして今なら価格を気にせず躊躇なく買える、と心の声が聞こえた。

思い切ってサイズのものを出してもらい、試し履きした。紐の締まり具合、足裏から感じるフロアの感触、足首に触れる布のかさつきを味わって、少し中学生の自分にタイムスリップ。

時を超えてわたしの足にやってきた、白いバスケットシューズ。

履いて歩くと、欲しいだけのお金もモノもなく、世間や世界を知らずとも、何者かになれるかもしれないという希望と妙に開き直った自信のある、ティーンエイジャーの自分が降臨する気がする。

魔法のシューズでもあるようだ。

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