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同潤会清砂通アパートメントNFT

うち(よろず屋)の隣に新しいコレクションが出来たよ。
オープンシーってどこの海ですか?ああ、ブロックチェーンですね。ええっ!なんぞそれ!と驚かれるんだけどさ、若い人は何となくわかるみたいだねえ。
婆ぐらいになると、四角いゴツゴツしたコンクリ固めみたいなアレに鎖がくっついて象でも繋いでるのかと思うよね。

20年前の写真があったのを思い出して、これどうしようか、そうだ象を繋ごうってすぐ思いついたんだ。イケてる案だと思うよ。

説明するより早いから先にちょっと見ておくれね。

昔、ホール&オーツっていう外国の二人組のプライベートアイズっていう歌が流行ってたのさ、婆も大好きでLPレコードが出るたび買ってたね。
それがデジカメのテレビCMで使われたから、デジカメ買うならSONY Cybershot-P1だろって。当時は今から考えられないほど画素数とか容量とか小さくて8万円ぐらい、パソコンもすぐいっぱいになったねえ。

手に入れたはいいけど何を撮るんだい?
そこに、同潤会アパート取り壊しで再開発の話が舞い込んだ。
と言っても、親戚が一部屋の権利を持っててさ、めんどくさいからって婆に代行しろやって白羽の矢が立ったのね。

やってらんねえなあって、行ってみたら驚いたんだよ。
で、次は絶対カメラ持って行こうって決心した。わかるだろ?んん?
こんな建物壊しちゃうんだよ、キロクしたくなる気持ちがさ、わかるだろ?
今から20年前の話だよ。

それをさ、ひなたぼっこする猫の背中を撫でてたら急に思い出したんだ。
あれどうしようって。どこかに残しておきたいなってね。

思い出のしまい場所にブロックチェーンを選ぶなんざ、イキじゃないかい?

婆の思い出なんか無いよ。
大正から平成にかけてたーくさんの人たちがここや他の同潤会アパートで暮らした跡をたくさん感じられたんだよ。
そりゃもう子だくさんの時代だったからねえ。
戦後の焼け野原でもここでどれだけ安心して笑っていられたかを聞いたよ。

ま、そんな話は今の若い人たち、特に仮想通貨だーNFTだーって楽しんでる人たちにはどうでもいいことだよねえ。

万が一、世界のどこかにさ、ビビっときちゃった人がいてくれたら嬉しいと思ってるよ。
ウォレットっていう財布の中にしまってさ、メタバースっていうどっかの箱の中みたいなとこでさ、その時代に浸って何かを思いめぐらすのも、ちょっとしたゲームみたいで楽しいかもしんないよ。


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