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大学生の春休みは長い。 実家へ帰省する鈍行電車の中で、これまでの学生時代を振り返っていた。 やりたいことなんてなにもない。 強いて言うなら、定時に帰れて、人間関係が良好なとこで働きたい。 給料は、平均くらいでいい。 学生時代、自分は要領がそこそこ良いって思ってた。 勉強は、量の割には順位が良かったはずだし、別に友達作りに苦労したってわけでも無かった。イケてるグループかと言われればそうではないけど、別に超陰キャってわけでもなかったと思う。 流れるように進路を決めてきた。
これまでの人生、振り返ると 他人の物差しをおもんばかって生きてきたような気がする。 つるむ人間、趣味、身に着けるアクセサリー。 どれもが他人を意識した結果、選択したものだった。 微妙に寝癖を残したまま、全身無地の服をまとい、 絶妙に汚れた瞬足みたいなスニーカーを履いてるヤツを見ると、 なんだか可哀想に思う。 他人からどう見えるのか? どう思われるか? なにを感じ取られるか? マイナスのほうには行かせまいと思い、常に選択してきた。 「自分は、自分の好きな恰好をする」
桜ってなんで川沿いに植えられてるんだろ。 会社まで行く近道だから、良く通るんだけど、 これくらいの時期になると毎回毛虫にビクビクしながら歩かないといけないんだよなあ。 桜はきれいだから好きなんだけど、それ以上に虫が嫌だ。 せっかく毎回クリーニングしてるジャケットに着いたら、 気分下がるんだよね。 まあでもそんなことを考えられるのも"社会人"に慣れ始めたからかなあ。 一年目なんて会社に行くたびに緊張しててそれどころじゃなかったもんな。 もう社会人になって丸三年、てことは四
前編 強迫された気づけば、高校へ進学していた。 中学の記憶がほぼない。 小学校のころは強烈に記憶に残っている。 Nってでっかくロゴが押されたバッグを後ろに背負いながら、 泣きそうになるくらい嫌々毎日塾に通っていた。 「みなさんいいですかぁー? 君たちは今日から競争ですからねー?。」 塾へ入って初日に講師に言われた。 変に間延びしてしゃべるやつだった。 けれどもいやな圧迫感と緊張感を醸し出してくるやつだった。 現に今も脳にこびり付いて離れない。 実際毎日が競争だった。
もう夕方か。 そろそろ体がくたびれてきた。 上はスリーピース、下はスウェット。 髪はスプレーでセットしてある。 以前、円形脱毛症になった。 禿げかかった頭皮を隠すためにスプレーでセットを始めたら、 それでしか上手くできなくなった。 今まさにノートパソコンの前に座って、 グループディスカッションに参加している。 特に人気な外資系コンサルや有名な日系企業では、 選考の序盤に設けられている。 採用活動の効率化。 集団の中で秀でたヤツだけ面接する。 さしずめこれは、 合コ
大学に入ってもう二年間経った。 もう四月で三年生になる。 あと二年、半分しかないのか。 二年生の11月、研究室配属があった。 ゼミ?っていうらしい。 統計、プログラミング、環境、マーケティング。 研究室によって学べることが違うらしい。 特に学びたいこともなかったから、一番楽そうなところを選んだ。 どうやら研究室訪問が推奨されてるっぽい。 なんで楽な選択肢を選ぶために、めんどくさいことやらなきゃいけないワケ? もちろん研究室訪問なんてせずに、研究室を選んだ。 どこの研究
東京駅、やたらでかいオフィスビルの一階。 受付のトリコロール的な帽子を被った女に、先方からもらった書類を渡す。 「はい。右から二番目のレーンをお通りください。」 やたら巻きで来るエレベーターに面喰いながら、面接のシミュレーションをする。 ガクチカ、自己PR、志望動機、逆質問、どれをとっても精緻で堅固だ。 もう手の付けようがない。 何度も何度もリピートした。 選挙の街頭演説もこんな感覚になるのだろうか。 エレベータから降り、受付の電話を取る。 「ああ!ようこそいらっしゃ