見出し画像

【映画】『明日への地図を探して』 (Amazon Original)

〜陳腐な青春映画の姿を借りて時間への深い視座を与える映画〜

アマゾン・オリジナルらしい、なるべく多くの人のウケを狙いに行ったために、ただただ薄っぺらくなってしまった映画。この映画を薦められる人は、青春恋愛映画をあまり深く考えず観る人か、時間について日頃から思い巡らしている人か、どちらか。後者の視点で楽しむには、薄っぺらい映画を、深く観ようとする一層の努力が必要。そうすると、2、3周回って、考えさせられるところがあると思える、かもしれない。

日本語タイトルも失敗している。原題は、”The map of tiny perfect things”。”tiny”(些細な、瑣末な)と、”perfect”が重要なのに。これが活かせたタイトルだったら、★は一つは増えた。

話は、時間ループにより毎日同じ1日を繰り返していても特段違和感なく受け入れ、あまり深く考えない青年と、聡明で美しく、そして毎日を繰り返すことに意味がある(最後にわかる)女性の話。女性が理知的で、青年が朴訥としているので、すぐに恋愛に発展しないことは、最初から明白。

主題は、「誰もが昨日と代わり映えのしない今日を過ごしている。みんな毎日がつまらないと思っている。しかし、ほんとに毎日同じ日を過ごしている人がこの世にいたら、どうする?!」ということ。そういうシミュレーションをこの映画でして、自分に置き換えて考えると、説教臭く陳腐だが、「毎日同じじゃない。同じだと思ってるのは思い込みで、つい見過ごしていることに注意を向けると、何かが変わる。小さな奇跡ってそこら中にある。変えるのは、周りじゃなく自分。」…ってなこと。まぁ、その通りなんだろうな。

こういう時間をテーマにすると、「誰が主人公なのか?」が時々話の中でも重要になったりするのはおもしろい。映画『TENET』でもそうだった。「誰かのせいで」他の人も一緒に時間を行き来、繰り返してしまう。こういう状況になった理由、神様レベルの何かの意図を勘繰る。そして、こういう状況を作った原因は自分ではない、俺は誰々の夢の中の中の登場人物の1人に過ぎないんだ、と気づくことも、普通はないのでおもしろい。「この人生は俺が主役じゃないのかよ?!」という気づきは驚きを持っておもしろい。一方で、女性の方を科学に明るい設定にして、無理に四次元とかうんちく言って二重構造の正立方体とか出して、それを最後のおオチにも使おうとするから、一気にくだらない映画になってしまった。読者を科学に無知な人がほとんどで、適当な難しい言葉で言いくるめられるという意図がミエミエなシーン。

冒頭でも話したが、この映画は浅い。時間云々抜きにして、若い美男美女の恋愛映画として普通に観れば良い。それでもまあまあおもしろい。いわゆる時間潰しにもなる。一方、時間=人生なので、この1時間半で何か得よう、1時間半は暇潰しじゃない、という人は、これをシミュレーションとして観てみよう。映画とは、すべからくそういうものかもしれないが、とかく時間をテーマにして主人公が自分たちに近い一般人の場合、自分に置き換えて観やすい、だから気づきが得られやすい。なので、映画はきっかけを与えるだけで、観ながら、自分との対話しているよ。振り返ったり、今後のことに思い巡らしたり。うまく行けば、映画もおもしろく、今後の人生の気づきも得られる、かもしれない。

→明日への地図を探して』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?