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保険本来の趣旨について考えてみる

こんにちは、UCnote担当です。
ここ数年、法人向けの保険では税制改正が相次ぎ、販売の仕方についての話が出てきています。そこでよく言われることの一つに、「保険本来の趣旨」という言葉があります。
本来の趣旨、とは何でしょうか。どのように考えたらよいのでしょうか。少し考えてみたいと思います。


■結論

  • 保障・補償を得ること

保障は生命保険、補償は損害保険です。今回は生命保険に限定して考えます。というのも

  • 弊社は生保がメイン

  • 税制改正も販売についても生保で言われていること

だからです。それでは進めていきます。


■保険本来の趣旨

▼保険とは?

まず保険とは、

偶然的事故の発生にそなえて最小の費用を事前に負担することによって、事故発生の際の経済的保障を達成するための経済的社会的制度。

コトバンク ブリタニカ国際大百科事典より引用

また他の出典では、事故の可能性を共有する人たちから一定の掛け金を拠出する、といった文言もあります。
そこで私なりに意訳しますと、

起きて欲しくないことが偶然起きた時のために、みんなで協力して金銭面だけでも備えておくこと。

です。そしてその起きて欲しくない事故の内容と起きた時に得られる金銭が保障です。 保険をもう少し広義に捉えるならば、金銭面やみんなで協力というのは()付でもいいかもしれません。

蛇足ですが、偶然に起きることに対して利益を得ることを射幸性と呼びます。射幸性の代表と言えばギャンブルや投機があると思いますが、保険にも射幸性があります。その違いは備え(消極的・結果的)か、取りに行く(積極的・目的的)かの違いがあると思います。

▼保険の趣旨とは?

冒頭にあげた通り、保障です。保障は、受取条件によって3つに分けられるのが一般的です。

  1. 死亡保険
    被保険者が亡くなった(または高度障害状態になった)場合に保険金が支払われます。保険期間を定めた「定期保険」や期間を定めない「終身保険」などがあげられます。

  2. 生存保険
    被保険者が一定期間生存していた場合に保険金が支払われます。「年金保険」や「貯蓄保険」が当たりますが、厳密に生存保険のみという保険はほとんど存在せず、死亡保険の要素を組み合わされています。

  3. 生死混合保険
    死亡保険と生存保険を組み合わせた保険です。被保険者が亡くなった(または高度障害状態になった)場合や、保険期間満了まで生存していた時に保険金が支払われます。死亡保険金と満期保険金(生存保険金)が同額のものは「養老保険」と呼ばれます。

これらは第一分野の保険と呼ばれます。また医療(病気・ケガ・特定の疾病等での入院・通院・診断等)や介護等は第三分野の保険と呼ばれます。この第三分野の保険も趣旨に含まれます。

また生存は起きて欲しくないことか?と考えると、悩ましいです。生存保険のみがほとんどない理由は、保険商品の運用面だけでなく、こうした側面からも説明できるかもしれません。ただ将来的に金銭的に苦しくなる恐れがあるならば、生存は金銭面においては望ましくないと考えることもできます。

▼趣旨以外の要素とは?

では趣旨以外の要素とはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 税務
    お金の動きである以上、税金は切っても切れない関係です。
    保険料は、法人であれば、損金になる場合があり、法人税等の納付額が変わってきます。また個人でも生命保険料控除が適用され、所得計算時に一定金額を差し引くことができます。そのため所得税や住民税額に影響を与えます。
    受け取る保険金・給付金も、税金の納付には大きく影響をします。契約者・被保険者・受取人の人的関係性や一時金か年金など保険金の受取方でも、どのような税区分になるかが変わります。所得税・住民税、贈与税、相続税等と多岐にわたって影響を与えます。

  • 資産形成
    ここでは保険金ではなく、解約返戻金での考え方です。一部の保険には、資産形成効果が得られるものがあります。
    保険期間終了前に解約した場合に解約返戻金(払戻金や返還金など保険会社によって名称が異なる場合があります。)としてお金が返ってくるものがあります。(一切ないものや少額の商品も多いです。)というのも保険料には、先々の保障に必要なお金を早めに集めているという性質があります。その早めに預かったお金を保険会社は運用しています。将来の発生するかもしれない保険金・給付金をより確実に渡すためです。その結果、払い込んだ保険料より解約返戻金の方が多くなることがあります。そのため資産形成効果がをもたらすことがあります。
    また解約返戻金がない、いわゆる掛け捨てだとしても、上記の税務にあるように多岐にわたって影響を与えることもあり、資産の一つであると考えます。

  • 金融
    契約者貸付という制度があります。その時の解約返戻金額を元に保険会社から貸付を受けるというものです。

以下3点は趣旨だとも思います。なぜなら保険の名称になったり、古くから利用されているものだからです。しかし今回は趣旨以外としました。なぜなら突き詰めると保障が目的と考えられるためです。

  • 為替
    他国通貨建(米国ドル等)の保険の場合は、為替に応じて保険料や保険金額、解約返戻金額が変動します。また、他国の方が日本より金利が高い場合には、運用による資産形成が有利に働く場合があります。そのため支払った保険料に対して保険金や解約返戻金が通常の円の保険よりも、より多く戻せる場合があります。(逆に少なくなる場合もありえます。)

  • 変額
    保険料の一部を投資信託等に振り分けて、資産運用を同時に行う保険です。こちらも運用状況に応じて契約返戻金額や満期保険金額が変わります。死亡保険金額は通常最低金額が定められており、それより下回りません。(増えることはあります。)

  • 福利厚生
    企業の役員や従業員の退職金準備に古くから利用されています。他にもがん保険やその他保障が使われることもあります。

▼趣旨以外の説明は不要か?

趣旨がメインであることは前提ではあります。しかし、それに付随する効果も魅力的であり、選択するうえで重要な要素であると考えます。考えられる限りは正確にお伝えしていくことが大切だろうと思っています。

▼趣旨はどのように把握すればよいのか?

趣旨の内容を知る最も良い方法は何かを考えると、「約款を見る」ことだと思います。 約款とは、保険契約における権利・義務が書かれている契約書の事です。保険に申し込むことで、いわば契約書にサインした形になります。 多くの約款では冒頭の方に、保障について書かれています。こちらを見ることでどのような場合に保険金・給付金が支払われるのか?という保険の保障を確認できます。ここが保険本来の趣旨と言えます。 また、商品パンフレットも考えました。パンフはより簡易的に内容を知ることができるため有用です。しかし、趣旨も趣旨以外もまとめて載っているため、趣旨のみを切り出すには約款の方が適していると考えました。


■まとめ

  • 保険の趣旨は保障のこと。

  • 趣旨を確認するには約款を見るか、保険会社に確認することが最も確実。


■担当の一言

本来の趣旨。それを守る。守り続ける。言うは易し、行うは難し…です。すぐ気が散ります。おすしを食べに行ったのにラーメンを食べてしまったり…
言い訳すると、太古の自然界のなかで、人間は気が散る者の方が生き残りやすかったという説もあるようです。ホモ属の末裔の一人として気を散らせつつ生きていこうと思います。

それでは、11月最初の週末もほどよくお過ごしください。


■参考

▼一般社団法人生命保険協会

一般過程テキスト(平成28年度)
変額保険テキスト(平成28年度)
応用過程テキスト(平成29年度)